政府が企業に人的資本情報の開示を求める方針を打ち出した。離職率や従業員の欠勤率、女性の登用率などの指標項目に大きく影響するのが「女性特有の健康課題の解消にどれだけ取り組んでいるか」だろう。健康管理や福利厚生の点で見ると、多くの日本企業では男性社員を中心とした従来の人事制度や支援策を続けているケースが多い。女性の労働人口が半数近くを占めるようになった今(*1)、「女性の健康視点の制度改革」が求められている。
昨今、生理のトラブル、不妊、更年期、婦人科がんなど女性特有の健康課題に対する解消策や支援策を「フェムケア」と呼ぶようになってきた。ここでは、フェムケアの中で最も該当人数の多い「月経(生理)のトラブル」をテーマに、人材投資の在り方を考える。

今や「月経トラブル」は企業が介入を検討すべき重要課題に
これまで、「デリケートな個人の問題なので、あまり会社が立ち入るべきではない」と考えられてきたであろう女性社員の月経に伴う体調不良の問題。しかし、この問題を“ないもの”のように扱っていると、今後は生産性の低下や離職率の上昇、女性活躍の機会損失にも手を打っていない企業とみなされてしまう恐れがある。
2021年に日経BP総合研究所の「生理快適プロジェクト」が実施した約2000人の働く女性の調査では、月経不調への無知や放置がどれだけ経済損失につながっているか、また、その解消が生産性向上、さらには社員のエンゲージメントやウェルビーイングの向上にも寄与していることが浮き彫りになった。
連載1回目は、月経痛やPMS(月経前症候群=生理の数日前からイライラや痛みなどの心身の不調がおき、月経が始まったら症状が消える)がどれだけ、仕事や生活に影響を与えているかの実態を知るところから始めたい。
そもそも、月経によって仕事や生活に悪影響を受ける女性は、全体の6~7割といわれており(*2)、今回の調査はこの「症状があって困っている」1996人を対象にしている。
その結果、仕事への影響は、毎月平均4.85日出ており、月経期間中の仕事の出来(生産性)は、月経の症状がない時を10とした場合と比べ、6.35(生産性は63.5%に低下)に下がることがわかった。
働く女性社員の約6~7割が、一年のうち約60日間も生産性が60%近くにまで下がった状態で働いているわけだ。もはや個人の問題ではなく、企業や社会も急いで取り組むべき課題といえるだろう。