(写真:123RF)

 「デジタル人材」をどうやって揃えるか。しっかり活躍してもらうにはどう処遇すればよいか。人事部にとって重要な任務の一つである。

 「デジタル」や「デジタル化」、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「DX化」といった言葉が当たり前のように使われている。首相はデジタル庁の設置を言い出した。デジタル担当役員を置いたり、DX推進室を設置したりする企業が増えている。

 だがデジタルという言葉を冠した取り組みには誤解がつきまとう。本サイトの主な読者は人事部の方だと思われるので「人事部の誤解」としたが「経営者の誤解」もあれば「社員の誤解」もある。

誤解1・「システムやツールの導入である」

 「何々化と書いてあったらそれは何々と関係はない」と喝破した批評家がいた。「何々化」は分かるようで分からない表現だからである。デジタル化もDX化も実に曖昧な言葉で、情報化やIT(情報技術)化やシステム化と何が違うのか、考え始めると分からなくなる。

 本連載では「社内外の情報を使いこなして事業を変革(トランスフォーメーション)すること」と定義する。事業の変革が重要であり、情報を取り扱うシステムやツールを導入しただけではデジタル化したと言い切れない。もちろん今どきの変革において情報システムやツールは必須と言ってよいのだが、新しいシステムやツールの導入に気をとられ、それだけが目的のようになってしまうことが多い。

 この定義に従うとデジタル人材は変革の担い手を指す。情報システムを開発しツールを利用する担当者だけではない。

誤解2・「専門家を雇えばよい」

 事業変革の担い手とは誰か。経営者、事業部門の長や部員、関連するスタッフ、そして情報システムやツールを担当するシステム部門あるいはIT部門の部員まで、多くの人が該当する。やや乱暴かもしれないが関係者全員といってよい。

 新しい情報システムやツールを導入する場合、それらが分かる専門家が必要であり、社内にいなければ雇うか、社外の専門家に協力してもらうことになるがそれだけで事業変革ができるわけではない。

 社会生態学者のピーター・ドラッカーは『ネクスト・ソサエティ』(上田惇生訳、ダイヤモンド社)の中で「今日のCEOにもっとも必要とされるものが情報責任である」と指摘した。ドラッカーによると情報責任とは、どのような情報がいつ必要か、どのような形で誰から得るのか、自分はどのような情報を出さなければならないか、を考えることである。

 つまり情報は自ら考え、動いてこそ、入ってくる。待っているだけでは入ってこない。ドラッカーがいう情報責任はCEO(最高経営責任者)にだけ求められるわけではなく、変革にかかわる「事業部門の長や部員、関連するスタッフ」にも要求される。