誤解3・「これから社会が変わっていく」

 デジタル化やDXの対象には企業の事業だけではなく自治体や官公庁も含まれる。さらに社会へと広がっていく。ITを生業にする企業が「個々の組織から社会へ」という絵をしばしば提示する。間違っているとまでは言わないが、この順番は逆である。

 社会のほうがすでに変わっている。個人がスマートフォンを持ち、インターネットを介して互いに、あるいは各種の事業に、つながっている。こうしたつながりの中における個人の活動や、そこで発生し、やり取りされる情報が積み重なり、集まった情報から何らかの知見が得られ、それが個人に戻され、影響を与える。目には見えないが、つながりとそこでやり取りされる情報が社会を支える基盤になりつつある。

 企業がデジタル化あるいはDXに取り組もうとするとき、こうした新たな社会基盤を前提に、その上で自社の事業や業務プロセスをどう変えていくかを考える。先に「システムやツールの導入だけが目的のようになってしまう」と書いたものの、「システムやツールは手段に過ぎない」と言い切ることもできない。システムやツールを介して社会基盤につながることで事業や業務の変革が促される場合もあるからだ。

 つながりが密になり、情報が飛び交う状態は良いことばかりではない。偽(フェイク)の情報を流す、個人情報を盗む、といった行為が発生しており対策が欠かせない。いずれも社会基盤の悪用だが、スマートフォンやインターネットが無かった時代への後戻りはできない。

誤解4・「人事部の仕事の一部である」

 必要な人を集め、その力を高め、最適な仕事に付ける。事業の変革を進めるにあたっては、人の配置が重要である。関係者全員が自分の持ち場で役割を果たし、成果を出せるようにする。情報を使って変革に貢献したかどうかをきちんと評価し、しかるべき処遇をする。

 これを人事部の役割とするならデジタル化に伴ってすべきことは多い。前述の通り、「情報システムやツールが分かる専門家が社内にいなければ雇うか、社外の専門家に協力してもらう」。有能な専門家は不足しており、求めるスキルを明確にして市場の相場で報酬を提示しなければなかなか雇えない。

 一方で経営者、事業部門の長や部員、関連するスタッフが専門家に「こういう情報が欲しい」と伝え、情報責任を果たしていくには情報に関するリテラシーが必要である。関係者が単なる思い付きで情報を要求するようになっては収拾がつかない。こうしたリテラシーを身に着けるには何らかの研修が求められる。また、情報リテラシーにはフェイク情報や情報漏洩への対処も含む。後者について研修をしている企業が多いだろうが、いずれも人事部の役割になる。

 採用、研修、配置、評価に役立つ情報システムやツールが登場しており、使えるものは使っていく。これが人事部自身のデジタル化ないしDXである。

 冒頭でデジタル人材を揃え、処遇することは「人事部にとって重要な任務の一つ」と書いたが、以上のように見てくると人事部の最重要任務と言っても過言ではない。デジタル人材を「変革の担い手」と定義したのだから当然と言える。