本当に足りない人材は何か

 つまり「デジタル人材が足りない」とは、情報システムの専門家の不足を指すというより、「変革の担い手」が社内にいないことと同義である。

 ビジネスコンサルティング会社、インターブリッジグループ(ibg)のコンサルタント、大西隆仁氏が「DX人材を探している」という企業の相談に乗っていたところ、先方から次のように言われたという。

 「DX人材については今の当社のあり方、つまり業務のあり方や顧客への価値提供のあり方を変えられる人材を探している。ITやデジタルの知識や能力よりも、方向を提示でき、変革を推進していける力を求めている」。

 デジタル人材、DX人材と言うと新しい話に見えるが、変革の担い手であれば新しい話ではない。リーダーシップ開発やリーダー人材育成など、これまで人事部が熱心に取り組んできたはずだ。その成果が今、問われる。

人事部が意識改革の旗を振る

 次回以降、「デジタル時代の人事戦略」というべきお題について体系立てて考えていきたい。次のような話題を取り上げていく。

・そもそも情報とは何か。情報をやりとりする(交換する)とはどういうことか。
・「どのような情報がいつ必要か」を正しく決められる力とは何か。
・情報によって事業をどう変革するか、その構想をどうまとめるか。
・必要な情報を取り扱えるシステムをどう設計するのか。社会基盤とどうつなぐのか。
・必要な人材をどう探し、どう引き付けておくのか。
・関係者を巻き込み、変革を推し進めていくにはどうするか。
・情報のセキュリティ、情報のガバナンスをどうしていくか。
・情報によって変わりつつある社会は今後、どうなっていくのか。

 列挙してみると抽象的で面倒な話に見えるかもしれないが、新型コロナウイルスを奇禍として、あらゆることを再設計していくつもりならこれらの検討は避けて通れない。

 意識改革、社風改革を唱える経営者は多い。当面の流行語であるデジタルやDXを利用しつつ、変革を担える人材を人事部が主導して育成していく。関係者全員に影響を与えられる日本企業の人事部ならそれができるだろう。