ここへきて、ビジョン、ミッション、パーパス、あるいは社是や社訓、行動規範などが改めて注目されているが、これらはいずれも「共同主観」である。大きな目的と言い換えてもよい。目的が共有されていれば、情報を主観的に集め、主観的に解釈したとしても、共同主観を持つ集合における「正しい」情報になる。

 共同主観を形成するには対策1から対策3が必須である。「視野を広げ、学ぶ」とともに「全体を見渡し、自分の位置付けを考える」。考えたことを「自分の言葉で伝え、関係を築く」。これを繰り返す。

 このプロセスを端折って、社長の周辺にいるスタッフ、あるいはガス抜きのために集められた若手に起草させるだけでは、組織を横断し、連帯を広げていく行動を促す共同主観を形作ることはできない。

人事部に“PBLのPMO”を

 対策1から対策4を担い、情報責任を果たせる人材をどう育てるか。個別の策はあり過ぎるくらいあり、人事部の方であれば色々ご存知と思う。以下に挙げるのはごく一部の例である。


対策1・全体を見渡し、自分の位置付けを考える
コンセプチュアルスキルや直観のトレーニングを実施し、人事評価点に自部門以外への貢献を追加

対策2・自分の言葉で伝え、関係を築く
プロジェクトチャーターやシナリオの作成を実践、オンラインを利用した日報の復活

対策3・視野を広げ、学ぶ
社内研修の拡充、社外の研修受講支援、異業種交流会、一定時間を業務以外の活動に割ける制度の創設

対策4・新たな連帯を形作る
チームビルディングやファシリテーション、ワールドカフェの実践

 どれをどう選び、どう進めていくかは企業ごと、人事部門ごとに異なるが、これらの策も統合して推進しなければ、もぐらたたきに終わりかねない。一案として、プロジェクトベースドラーニング(PBL、問題解決学習)を挙げる。何らかの問題を取り上げ、仮説を立てて解決策を用意し、それを実践、試行錯誤を繰り返す過程を通じて学ぶ、というものである。

 PBLは学校教育において語られることが多いが企業の人材育成にも有意義である。できれば本業の実務において実践する。本業で問題が発生した場合、あるいは発生が予想される場合、問題を解決するプロジェクトを起案し、計画を立て、実践する。並行して対策1から対策4までの個別策を提供し、プロジェクト参加者に学びなからプロジェクトを進めてもらう。

 複数のプロジェクトが発生するのでそれらを見渡して、個別に支援するプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)を本社に置く。人に関する相談に応じられるようにPMOに人事部門の担当者を入れておくとよい。例えば、あるプロジェクトで「顧客に詳しい人がほしい」ということになったら社内を見渡し、適任者を見つけ、上長にかけあって一定期間プロジェクトチームに加わらせる。いっそのこと人事部門にPMOを置いてはどうだろうか。プロジェクトの支援で最も効果的なのは適任者をチームに送り込むことである。

 情報責任を果たすための対策4点と人事部門の役割を図にまとめた。人事部門も当事者として「全体を見渡し、自分の位置付けを考える」。考えた結果を「自分の言葉で伝え、関係を築く」。とりわけ経営者とのコミュニケーションが重要である。対策4点を進めるにあたっては、人事部門としてどうしたいのか、人事部門の自己を確立しつつ、社員や経営者、あるいは社会との関係も重視して取り組む必要がある。

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