新たな共同の主観をつくる

  

 「視野を広げ、学ぶ」「全体を見渡し、自分の位置付けを考える」「自分の言葉で表現し他人と共有する」ことを互いに繰り返していくと新たな連帯(共同主観)が形作られていく。共同主観は個々の社員の主観を尊重しつつ組織をまとめていく拠り所を指す。決められた正解はないし、教科書もない。正解を調べて学ぶのではなく、全員が納得する正解を見いだし、つくっていくことになる。

 「業務をこう変える、そのためにこういう情報を使う」という共同主観が業務部門と情報システム部門の間で形作られてこそ、トランスフォームが進む。製品開発のやり方を今後こうトランスフォームする、という共同主観がまとまれば各技術者の役割がはっきりし、メカエレキソフトは死語になるはずだ。

 当社の社員に求められる姿勢はこうだ、という共同主観ができ上れば、働き方のトランスフォームを進められる。「社員は持ち場の仕事に専念し、他部門の事情や自分のキャリアなど考えなくてよい」という共同主観に行きつくことがあるだろうか。高い競争力を持つ製品ないし業務プロセスを持っているから、ひたすら究めていけばいい、だからトランスフォーメーションなど不要、という企業ならそれでよいかもしれないが、極めて稀だろう。

 トランスフォーメーションの成否は関わる人々の視座の高さによる。ibgの好川一(まこと)代表は指摘する。「改革には問題意識、危機意識、当事者意識が必要。日本企業には当事者意識が足りないと思ってきたが、実は問題意識が低い。見ている世界が狭く、その中の問題にとらわれてしまい、本質的な問題に気付かない」。

 部下に影響を与えられる管理職の視座がとりわけ重要だ。管理職に高い視座を持つことを要求できるのは経営者だが、具体策は人事部の仕事である。「関心を持てる世界を自分で開拓し、試行錯誤を繰り返して、様々な収穫を得る、という経験を若いころから持つことだ」(好川氏)。