(写真:123RF)

 「社長のように」とは大所高所から考え、しかるべき意思決定ができるという意味である。身近にいる社長のように判断してもらっては困ると思われた読者の方は書籍や新聞・雑誌などを通じて知った尊敬できる社長を想起していただきたい。

 いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)を担う人材像を本欄で考えてきたが「社長のように判断できる人材」と言い換えられる。なぜなら、DXは「社内外の情報を使いこなして事業を変革すること」であり「大所高所から考え、しかるべき意思決定ができる」人材が担う必要があるからだ。

 前回記事『視座が低いと成果は小さい、どうすれば見渡せる所に登れるか』で「物事を変えられる視座を持つようにしなければならない」と述べた。それを読んだ方から感想や応答を頂戴したので紹介する。

[読者から]

DXに本気で取り組むなら、情報システム部門の担当者であれば部門長を目指すだけではなく、社長になるくらいの気概と実力を持ち、周囲から信頼を得ることが必要でしょう。とはいえどうしても技術を中心に考えてしまう人が多く、技術以外の壁に当たると逃げてしまう。そこをなんとかしたいものです。

 かつて製造業の役員をされ、情報システム部門も管轄されていた方の意見である。その当時、「部門の生え抜きから次の長を引き上げたいがなかなか難しい」と話されていた。

 別の製造業の技術者の方から次の感想をいただいた。

[読者から]

視座≠地位と理解しました。

 その通りであり、社内の地位がまだそれほど高くはない現場の方も時には高い視座を持って物事を考えることになる。もちろん地位の高い方にも高い視座が求められるからその場合は「視座=地位」になる。さらに言えば地位の高い人が部下の視座に合わせて対話することも状況によって求められる。

 前回記事で視座を高める流れについて次のように書いた。「全体を見渡し、自分の位置付けを考える」。考えを周囲の人に「自分の言葉で伝え、関係を築く」。相手の反応から自分の考えを調整する。同じことを相手もする。これらを繰り返すと徐々に視座が高まっていく。前提は「視野を広げ、学ぶ」ことである。

 「全体を見渡し」「視野を広げ」と書いたため、考慮の対象範囲を広げるのはよいとしてそれだけでは不十分ではないかという指摘もあった。事故・トラブルの人的・組織的要因分析をされてきた方である。

[読者から]

俯瞰すると言った場合、考慮の対象となる範囲を拡大する方法と、抽象化・一般化する方法とがあると思っています。事故・トラブルの原因分析とそれに基づく是正処置・予防処置の立案を例にとりますと「現実に起こった問題をいったん一般化・抽象化して表現し、解決するための一般化・抽象化された対策方針を立案した上で、それを個別・具体的な問題に対応した対策に落とし込んでいく」ことが重要だと考えます。ただし「具体的現象→抽象化した事象表現→抽象化した対策方針→具体的対策」という一連の流れの中で具体と抽象のフェーズを変えるところが、人によっては非常に困難でセンスと訓練が必要です。

 「現実に起こった問題をいったん一般化・抽象化」するのは問題の本質を追究するためだ。特定部門の事故・トラブルを自社一般の問題として考えてみる。さらに製造業一般あるいは日本企業一般の問題として考えてみる。つまり視座を高めていく。

 一般化・抽象化と聞くと他人事にするのかと誤解する人がいるが、上記の例で言えば再発を防ぐ「是正処置・予防処置」をとるために「いったん」視座を高めようということだ。個別かつ具体的に問題を解こうとすると小手先の対策や犯人探しで終わりかねず似たような事故やトラブルが再び起こる危険がある。