(写真:123RF)
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 「高度なAI(人工知能)スキルを持った人材なら新卒でも高額の報酬を別枠で用意」「DX(デジタルトランスフォーメーション)に欠かせない専門人材をジョブ型で雇用」といった内容の報道をしばしば見かける。伝統的な日本の大企業が思い切った取り組みをするからニュースだ、ということだが大半は失敗に終わるに違いない。

 まず採用しようとする人材の定義がおかしい。それでもまぐれ当たりで優秀な人材を雇えたとしても使いこなせない。新卒を特別扱いしたらその本人が潰れてしまいかねない。あるいは潰されかねない。

 英略語や片仮名で記述される仕事の専門家を集めようという施策はこれまでもたびたび行われてきたが成果を上げた話を聞かない。30年ほど前、金融業が理工系学生を意図的に多く採り、製造業から恨みをかったことがあった。当時の理工系出身者が幹部として育ち、金融業のDXを推進しているとは到底言えない。

将来像を描ける人が最重要

 経済産業省が2018年9月に出した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開』を見ると「ユーザ企業において求められる人材」として以下が列挙されている。

  • CDO (Chief Digital Officer):システム刷新をビジネス変革につなげて経営改革を牽引できるトップ人材
  • デジタルアーキテクト(仮称): 業務内容にも精通しつつITで何ができるかを理解し、経営改革をITシステムに落とし込んで実現できる人材
  • 各事業部門においてビジネス変革で求める要件を明確にできる人材
  • ビジネス変革で求められる要件をもとに設計、開発できる人材
  • AIの活用等ができる 人材、データサイエンティスト

 これでは従来のIT人材、あるいは情報システム人材とさして変わらず、DX人材が何なのかがよく分からない。「ビジネス変革」や「経営改革」をしないとトランスフォーメーションとは言えないということは読み取れる。

 本連載の『「デジタル人材」を巡る人事部の誤解』に次のように書いた。

「デジタル人材が足りない」とは、情報システムの専門家の不足を指すというより、「変革の担い手」が社内にいないことと同義である。

 さらに『視座が低いと成果は小さい、どうすれば見渡せる所に登れるか』で次のように指摘した。

「業務をこう変える、そのためにこういう情報を使う」という共同主観が業務部門と情報システム部門の間で形作られてこそ、トランスフォームが進む。

 ここでいう共同主観は「こうなりたい」という将来像、ビジョンを指す。経産省が挙げた人材のうち、CDOやデジタルアーキテクトそして事業部門の変革要件を明確にできる人とは、要するにビジョンが描ける人である。あるいはチームを動かしてビジョンが描ける人である。