(写真:123RF)

 日本企業における各部門はしばしばタコつぼに例えられる。各部門に所属する人は目の前にある自部門の業務にもっぱら専念する。外に出て他部門あるいは他の組織とかかわることはそう多くない。タコつぼが並ぶ組織を縦割りと呼ぶ。

 タコつぼには一長一短がある。自部門の業務に詳しくなる半面、視野が狭くなりがちになる。各部門が業務を極めていけるが部門と部門が連携し大きな価値を生もうとするとうまくできない。タコつぼの長所を残し、短所を直すためにはタコツボに横串を通し、それをやり切る「横串力」が求められる。

 この言葉はHuman Capital Onlineの読者から寄せられた次のご意見から引用した。本連載はDX(デジタルトランスフォーメーション)人材のあり方を考える場であり、前回から「DX人材についてご意見・ご質問がある方はぜひお寄せいただきたい」と読者の方々にお願いしている(ご意見・ご質問の投稿方法は本記事の最後に掲載)。

[読者から]

DX成功のために次の3点が必須と考えております。

・全体最適のための業務の変化に現場が納得する
・手段の目的化を改めるためにDXの定義の共通認識を持つ
・“DX or die”の理由を全員が認識する

人事戦略という意味では部門間の「横串力」を持つ人材の確保が肝要と考えます。

(製造業、従業員1000-4999人)

 本連載ではDXを事業変革、DX人材あるいはデジタル人材を変革の担い手と定義している。変革には確かに上記3点が欠かせない。複数のタコつぼの中にいる人たちが共通認識を持って変革に納得するために「横串力」が必須である。

 「頭の中の引き出しにあるビジョンを増やし、視野を広げて様々な情報や人と交われる人材」。これは前回の本欄で紹介したDX人材の条件である。ビジネスコンサルティングを手掛けるインターブリッジグループ(ibg)の大西隆仁氏の指摘だが、これも横串力がある人材と言い換えられる。

横串を通す活動は「現状把握とプロジェクト」

 組織として横串力をどう確保すればよいか。まず「横串を通す」とはどういうことか、そもそものところから考えてみよう。ibgの池田光成氏は「現状把握とプロジェクトの両方が必要」とし次のように説明する。

 「『うちは縦割りですから』というのは組織人の常套句だが組織の現状をきちんと調べ、何がどのように縦割りでどう困っているのか、組織として共通の認識を持たないと横串の通しようがない」

 タコつぼが複数並んでいる組織の構成員に調査票を渡して記入してもらったり聞き取りをしたりすると「ある部門の問題意識と別の部門の問題意識が違っていたりする」(池田氏)。どちらのタコつぼも「縦割りをなんとかしてほしい」と言うものの互いに別の問題を見ているので横串はなかなか通らない。

 しかもタコつぼの中で目につく具体的な問題をとらえて「縦割りだから」と言っていることも多い。「組織文化のせいか、各部門のマネジメントスタイルのせいか、あるいは目的を掲げて実行し、振り返るという基本動作ができていないせいか、縦割りの問題が生じる理由を見極めないと有効な手を打てない」(池田氏)。

 

 現状を把握したら横串を通す活動に入る。複数のタコつぼの間で「これが一番の問題だ」という共通認識ができたら、問題を解決するために取り組むテーマをいくつか抽出する。各テーマと各タコつぼ(各部門)のマトリクスをつくり全社員に示す。テーマごとに関連するタコつぼから人を選び、横串を通すプロジェクトチームをつくって取り組ませる。