[読者から]

事業部のエースを情報システム部門に送り込むことは正しいと思います。更に提言するのであれば下記2点と考えます。

・情報システム部門のエースを事業部に送り込む。稀かもしれませんが元々事業部に配属された後、システム部門に異動となり、その後結果を出した人がいれば思い切って現場で修行を積ませる。戦闘力が向上し、横串力のある人材になれると考えます。

・各事業部のエースを集めたプロジェクトチームを作り、そこへ情報システム部門の人材を入れ、チームで活動させる。事業部のエースをシステム部門に送り込むだけでは当該事業部の部分最適に走ってしまう危険があります。各事業部から平等に人材をピックアップすれば全体最適を考えられる人材育成が可能になると考えます。

(製造業、従業員1000-4999人)

 タコつぼをまたがる人事異動は欧米企業では難しい。ある職種の人はその職種を続け、社内で別の職種に就くことはあまりない。同じ職種でよりよい条件のポストが見つかれば転職する。したがって横串を通すことはやはり簡単ではないが、社内にしがらみがないコンサルタントなどを雇い、権限を与え、強引に変革を進めていく。

 日本企業はこれまで社内の人材に経験を積ませ育ててきた。人事ローテーションによって横串人材も育てていける可能性がある。ただしローテーションの目的をはっきり定め、結果を検証し、目的を達成できなかった場合にはやり方を見直す、といったようにローテーションをきちんとマネジメントする必要がある。

 いわゆるジョブ型雇用が役割を明確にして極めてもらうことと定義するならタコつぼはさらに強固になるだろう。冒頭で述べた通り、長所を伸ばすことになるかもしれないが「役割をはっきりさせればさせるほど横同士がつながりにくくなる」(池田氏)ので組織の横串力はさらに下がる。不確実な時代と言っているのだから役割をますます決めにくい。形骸化が確実なジョブ定義をつくる時間があったら横串力を磨いたほうがよい。

君子を育てることが人事の仕事

 横串の通し方、横串を通せる人材について考えてきたがやはり難しい。なぜなら横串を嫌う組織文化が日本にはあるからだ。

 ibgの好川一(まこと)代表は論語の『君子和而不同,小人同而不和(君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず)』の後者が日本のタコつぼの姿勢だという。タコつぼとタコつぼの間で波風を立てることを嫌うので一見「同じて」いるが組織全体としては「和せず」、つまり協調して動けない。周囲に「同ぜず」、しかも組織と「和して」いける君子を少しでも増やさないといけない。君子なら横串を通せる。

 人事部門がやれることは多い。横串人材の発掘やローテーションを通じた開発は人事の仕事のど真ん中である。横串活動をする人たちが主体的に、楽しみながらやれるように、自由な環境を用意し、裁量権を与える。横串活動への感謝を伝えあう仕組みを整える。こうした支援も人事の仕事と言える。

 もっと言えば、現状把握を人事が主導し、テーマ設定やプロジェクトチーム作り、そして実行に至る横串活動に踏み込んでもいい。開発・営業・製造など各部門のタコつぼをつなぐ。社内と社外(協力企業)、経営者と社員をつなぐ。人事こそ横串活動の適任部門と言える。

 以前の記事『「新型コロナでリモートワーク」はDXでも何でもない』で次のように指摘した。

「複数のプロジェクトが発生するのでそれらを見渡して、個別に支援するプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)を本社に置く。人に関する相談に応じられるようにPMOに人事部門の担当者を入れておくとよい。(中略)いっそのこと人事部門にPMOを置いてはどうだろうか。プロジェクトの支援で最も効果的なのは適任者をチームに送り込むことである」

 極論のようだが事業を変革するDXの推進役あるいはPMOを人事部が担ってもおかしくない。逆に目の前にある定型のバックオフィス業務に忙殺されてばかりでは人事部がタコつぼになってしまいアウトソースの対象になりかねない。

 本連載はDX人材のあり方を考える場である。DX人材についてご意見・ご質問がある方はぜひ下記からお寄せいただきたい。

連載『人材開発の情識』では、人事のお仕事をされている読者の皆さんからご質問やご意見を募集しています。連載の主題は「デジタル人材」をどうやって揃えるか。しっかり活躍してもらうにはどう処遇すればよいのか。「デジタル化」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」といった言葉が躍り、デジタル担当役員を置いたり、DX推進室を設置したりする企業が増えています。しかし、実際の担い手が足りない、いない、という声も聞こえてきます。デジタル時代の人事戦略についてご質問・ご意見をお寄せください。連載の中で回答します。ただしすべてにお答えすることはできませんのでご了承ください。

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