「倫理スキル」を身に付ける方法

 かつて日経コンピュータに倫理スキルについて書いたので引用する(2014年11月13日号)。

 ガートナーは『2014年、CEOの決意』という報告書でデジタルビジネスの機会を勝ち取るために社内で倫理に関する議論を深めるべきだと述べ、「会議で倫理に関する手短な議論を定期的に推進する。休憩時間中でもよい」「他業種に関するものも含めたニュースの例を使ってチームに予行練習をさせる」といったやり方を示している。

 さらに議論や予行練習の題材となる質問として、ガートナーは次のような例を挙げている。「荷物を配送するドローンが500回中1回墜落し、落下するドローンに当たった人が重傷を負う可能性が1000回中1回ある場合、容認されるか」「ドローンが撮影した調査データが提供された。人の姿や裏庭における個人の活動がはっきり見える。そのようなデータを使用すべきか」。

 ここまで具体的な質問になれば「休憩時間中でも」話し合えるかもしれない。新入社員や新任管理職に向けた研修の中で考える時間を用意することもできる。あくまでも「議論や予行練習」をする、つまり普段頭の中にないことをあれこれ考えることが狙いである。具体的な質問に具体的な答えを出そうとするとかえって思考が狭まってしまいかねない。

 頭を柔らかくするためにもっと身近な問題をテーマに話しあってもよい。ビジネスコンサルティングを手掛けるインターブリッジグループ(ibg)のコンサルタント、小泉純氏は雑談を勧める。任意の問題を取り上げ、その解決に向けて判断し、行動するための何らかの基準を考え、基準について次の点を検討する。

  • 自らの理想そして社会に合っているか。
  • 周囲(自分を含む環境)に対する影響を考慮したものか。
  • 周囲の人に説明できるか、共感を得ることができるか。
  • 同じ状況が起きたら、同じ判断を継続できるか。

 どんな問題でもよいが一つ選び、判断基準を作って上記の点を考えてみようとするとなかなか難しいことが分かる。『社長のように判断できる社員の育て方』で述べたように、視座を上下させて「担当を超えた範囲や直接の仕事を超えたテーマまで見られる、引き出しがたくさんある状態」になることが求められる。

あえて迷子になる

 雑談それ自体は引き出しを増やすことにつながる。今まで考えてこなかった何かについて考えてみるのもよい。その一助としてibgは『迷子になる地図』というサイトを開設している。

 「迷子」は台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タン氏の発言に基づく。芥川賞作家の上田岳弘氏との対談で「AIでやれることはAIに頼む。それを続けていったら最終的に人間は何を考えればよいのか」と上田氏に聞かれたタン氏は次のように答えた。