1・全体を把握する

 プロジェクトで何を目指すのか。譲れない価値観とは何か。そうした点を織り込んだプロジェクトのグランドデザイン(全体像)を描く力が求められる。全体像があってこそ、チームメンバーや関係者と前向きな対話ができる。

 グランドデザインは詳細な計画ではない。利害が対立する複数の部門をまたがって変革を進めていくときに、関係者の合意を取り付けられる共通の目標を示せればよい。そのためには自社が社会や業界の中でどういう位置にあるかを把握し、「世の中はこう動いているから我々はこうしよう」といった案をまとめる必要がある。

 プロジェクトにおいて「販売管理システムを作り直す」という目標があるとしよう。だが販売管理システムを使う関係者の意見だけを聞いて作り直そうとしてもうまくいかない。果たして作り直すことをトランスフォーメーションと言えるのか。作り直すとどういう影響が社内に出るか。こういうことを関係者が対話し、販売管理システム再構築プロジェクトの全体像を描き、位置付けていく。議論の末、「システムを作り直す前に営業組織の見直しが必要」という、別の全体像が描かれる可能性もある。

 先に「チームの中心メンバーは事前検討に参加しておりプロジェクトの狙いも課題も熟知している」と書いたが実はそう思い込んでいるだけかもしれない。他のメンバーを入れ、別の視点から見直すと「狙いも課題も」変わる可能性がある。

 「今はインターネットをちょっと検索するだけで多くの情報が手に入る。情報の真偽を確かめないといけないが、世界の動向をまとめ、その中における自社や自部門の位置付けを確認し、目標を立てることはそう難しくはない。プロジェクトメンバーでグランドデザインをつくればレベルセッティングにつながる」(好川代表)

 ところが多くの企業はその手間を惜しみ、所属する業界のことはよく分かっているという前提のままプロジェクトを進めようとする。「昔であれば例えば成長という大きな共通目標があり、人々の足並みを揃えやすかった。今は違う。たとえ同じ組織の一員であっても、それぞれの頭にあることはバラバラ」(好川代表)。

 一番困るのは全体を把握できていないのに「分かっている」と錯覚し、しかも発言力と影響力が強い幹部である。