人事部門ができることは多い

 以上の3要件を備えた人材を見つけ出す、あるいは育てるために人事部門ができることは多い。グランドデザインを描く研修や前向きな対話をするためのトレーニングをやってみる。経営幹部に向けた研修で、タックマンモデルの認知を進めることにも意味がある。

 ibgのコンサルタント、大西隆仁氏は始めやすい取り組みとして「深い自己紹介」を勧める。プロジェクトの形成期でメンバー同士が自己紹介をする際に「これまで仕事をしてきて嬉しかったこと」といった話をしてもらう。通常の研修の冒頭に実施してもよい。積極的に話ができる人から先に自己紹介する、上手に話を聞き出せるメンバーをファシリテーターにする、といった工夫があるとなおよい。「そんなことをなぜ話すのか」と思う人は少なくないからだ。

 初対面なら当然だし、長年一緒に仕事をしてきた同士であっても案外、相手のことを知らない。「相手の価値観やその元となった経験を知っておかないと、相手が提案や発言に込めた思いが分からないので建設的な対話になかなかならない」(大西氏)。

 言うまでもないが組織の中で、全体像を確認し、対話を重ねられる人を増やしていくには相当な時間がかかる。トレーニングをするにしてもなぜそれが必要かを分かってもらうところから始めないといけない。人事部門が社内外の動向から求められる人材の「全体(像)を把握」し、それを説明できる「自分の言葉を持つ」ことで「対話ができる」はずである。

読者からの質問にお答えする

 本欄の読者の方から次の質問をいただいた。

[読者から]

情報システムを受託する立場です。『DX人材を見出して教育するように』と経営陣から指示があります。 しかし今回のコラム(記事はこちら)のとおり、DX人材とは情報システム戦略を立てることができる人材そのものだと考えております。DX先行ではなく、戦略を先に立案することが大切である、と誘導するには人事としてどのような行動が求められるでしょうか。

(情報・通信、従業員数100~900人)

 「DX人材」について経営陣が持つ認識のレベルが異なっている。だが、経営陣に対してレベルセッティングをすることはなかなか難しい。経営と人事でずれがあることは承知の上で、戦略立案ができそうな社員を探し、そのためのトレーニングを実施してしまう手もあるが、「DX人材なのになぜAIやデータサイエンスのトレーニングをしないのか」などと経営陣が言ってくるかもしれない。

 正攻法は人事として「我が社におけるDX人材」のグランドデザインを描き、そこで「情報システム戦略を立てることができる人材」と言い切り、経営陣を納得させる説明(言葉)を考え、対話することだろう。

 一例だがインターネットを検索し、「世界IT関連職種の平均年収」といった数字を探す。システム戦略を立案する人材に近いビジネスアナリストやエンタープライズアーキテクトといった職種の年収を示し、「日本でも今後、この職種が高く評価されるから育てましょう」と経営陣に説明してはどうだろう。

 本連載はDX人材のあり方を考える場である。DX人材についてご意見・ご質問がある方はぜひ下記からお寄せいただきたい。

連載『人材開発の情識』では、人事のお仕事をされている読者の皆さんからご質問やご意見を募集しています。連載の主題は「デジタル人材」をどうやって揃えるか。しっかり活躍してもらうにはどう処遇すればよいのか。「デジタル化」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」といった言葉が躍り、デジタル担当役員を置いたり、DX推進室を設置したりする企業が増えています。しかし、実際の担い手が足りない、いない、という声も聞こえてきます。デジタル時代の人事戦略についてご質問・ご意見をお寄せください。連載の中で回答します。ただしすべてにお答えすることはできませんのでご了承ください。

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