強い組織はDXを語らない
「顧客に対してどのような価値を提供したいのかという使命やこうありたいというビジョンが明確になっており、それに社員が共感している組織がやはり強い」。大西氏はこう見ている。
こうした組織においては主役や脇役という見方自体、意味がなくなる。あえて言うなら顧客が主役だが、価値の提供にかかわる社員それぞれの役割がはっきりしており端役ではない。強い組織に必要なことを大西氏は次のように整理する。
- 提供したい価値、こうなりたいというビジョンをはっきり言葉としてまとめ、社員の共感度を高める
- 価値やビジョンを実現するための業務のありかた、部門や担当の役割を互いに理解する
- 各自が価値やビジョンに向かうための課題を意識しつつ役割を果たす
- 課題をどう達成するかを考え、新しいデジタル技術が使えないか検討する
- 新しいデジタル技術を利用し業務を変え、課題を達成する
①から③まではデジタルもトランスフォーメーションも出てこない。⑤まで到達したとき、そうしたければDXと呼べばよい。
「何をするか」が分かっているか
実際には①からして難しい。ibgのコンサルタント、池田光成氏は「組織や自分たちが置かれた状況を見て、『何をするか』が分かっているかどうか、『どうやるか』が分かっているかどうか、と考えていくと価値がはっきりと見えてくる」と助言する。
「何をするか」が分からないなら、組織のビジョンや目的、進む方向を見出さないといけない。経営トップが示してもよいし、現場の面々が組織内外の現状を棚卸して話し合ってもよい。
納得できるビジョンが見えてきたら言葉にまとめ、現状とのギャップをはっきりさせる。ギャップが取り組む課題になる。課題は色々出てくるのでどこから取り組むのか優先順位を付け、実現までの道筋を考える。
何をするかが分かったら具体的にどうやるかを詰めていく。ITを使うのか使わないのかを決め、ツールが必要なら比較検討して選ぶ。後は実行である。プロジェクトとして実施するならチームをつくり、日程計画を立て、進めていく。