2020年5月、東京・大手町の新本社ビルに移転した三井物産。当初の計画では従来のような執務スペースと会議室がフロアごとに配置される一般的なオフィスが想定されていた。ところが2017年に発表した「長期業態ビジョン2030」で掲げている「強い『個』が自らビジネスをつくる三井物産へ。」を実現するには、未来の働き方を意識したオフィスが必要なのではないかという意見が若手から上がり、経営企画部の鈴木大山氏(当時)が中心となって、2018年に有志のタスクフォース「Work―X」(ワークエックス、ワークプレース・エクスペリエンス=職場体験の略)を立ち上げた。

 その後、人事総務部に新設されたWork―X室では、社員が仕事の状況や内容に応じて働く場所を主体的に選択するActivity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング、以下ABW)の手法を取り入れ、社員のコラボレーション促進を目的としたオフィス計画と実践に取り組んできた。新オフィスに移転して9カ月。コロナ禍で社員がオフィスに出社できない状況が続くが、新オフィスはどのように活用されているのか、また、社員の意識と行動はどのように変わってきたのか。現在、Work―X室長を務める太田まどか氏に聞いた。

多様な働き方で同じ目標に向かうことができる

――欧州駐在やサステナビリティ事業を経験され、20年10月にWork―X室長に就任されました。海外拠点で異文化における働き方を経験され、日本との違いを実感したのはどういったところでしょうか。

太田まどか氏
三井物産 人事総務部 Work―X室長
2001年、三井物産入社。法務部配属後、2年間フランスに駐在。2006年より金属資源本部に異動、ニューカレドニアのニッケルプロジェクトなどに携わった後、三井物産メタルズへ出向し鉄鉱石事業も経験。2014年より3年余り英国に駐在し、アフリカ関連事業などに従事。2017年、金属資源本部に帰任。2019年4月、サステナビリティ経営推進部立ち上げに携わり、2020年10月より現職。(撮影:稲垣純也)

太田まどか氏(以下、太田):社内でも、私がいた法務部のコーポレート部門と営業部門とでは転職したかのようなカルチャーの違いがあります。特にフランス人の働き方は日本人と真逆だといわれますが、パリの事務所に駐在していた際にはまさにそれを体験しました。上司と私が日本人、それ以外がフランス人というチームで、当時は働き方の観点で上司とメンバーの意見が相違することはよくありました。業務を最優先する上司と、2週間のバカンスを何よりも大切にするフランス人。仕事に対する熱意や思いは変わらないのですが、働き方や時間の使い方が異なるのです。海外駐在経験を通じて、「熱心に仕事する」とは、週末に会社に来たり、遅い時間まで残業したりすることではないという価値観や意識の違いを知ることができました。

――Work―Xは18年、有志によるタスクフォースチームからスタートしました。当時は金属資源本部からサステナビリティ経営推進部に軸足を移す過程で、この取り組みを見ていたのですね。

太田:当時は、面白いプロジェクトだと思いつつ「会社がすごく変わりそうだ」と他人事のように感じていた部分もありました。ABWという新しいコンセプトを打ち出したことに社内の抵抗もあった時期です。私も海外駐在を経験しましたが、働く時間や服装も同じ日本企業の働き方に疑問を持ったことはそれまであまりありませんでした。「会社が目指す目標のためにもっと良い働き方があるのではないか」とタスクフォースチームが社内に問いかけてくれ、その道を切り開いてくれたと思います。