――面接官の中に、申請者の上司はいないのですか

宮田:原則としてはいません。申請者の上司がオーナーであるケースもありますが、上司と部下という関係性は一切考慮しません。書類審査は公平性を確保するため名前を伏せて行われます。これがポイントです。自分の力だけで戦うことが大事です。

 日々の業務では、同じメンバーや上司とのコミュニケーションが多いために、暗黙知が存在します。暗黙知は業務を効率化するというメリットもありますが、いざ、自身の経験や知識を他の人々に語らなければならない場面ではそれは通用しません。慣れていなければとても難しいことです。「全く歯がたたないな」と感じる人もいるようです。しかし、認定にチャレンジした経験とフィードバックによって、再度チャレンジする社員の認定取得確率は初回時に比べて全領域で高くなっています。それは、この制度が単なる認定取得をゴールとするものではなく、社員の成長に資するものだという一つの証だと思っています。

2割しか認定されない

――なかなかカルチャーショックな経験ですね。実務をやりながら申請するわけですから、本人にも相当な負荷がかかるのではないですか。

宮田:はい、社内でもかなり言われました。特にカルテ作成作業は申請者が多大な労力を割くことになります。ただ最近は、自分の経験や知識を日頃から整理してカルテに書き溜めていけば、自分の成長の記録になるという前向きな声も上がっています。

 例えばITサービスの領域では、ITIL (Information Technology Infrastructure Library)など業界標準のフレームワークに当社の業務に適合させた50~60項目について、今までの業務を通じて得た自分の経験などを当てはめて、それらの項目ができていることを証明します。これまで自分の経験を棚卸しした経験が少ないと、とにかく時間がかかります。転職のために業務経歴書作成などで棚卸しした経験がある私も、この制度に応募しカルテを書いてみて「項目数が多い!」と卒倒しそうになりました(笑)。ちなみに私が認定を受けたITSM領域の審査項目の設定や事務局業務には、公平性を保つために私自身は一切関わっていません。

 認定制度の対象は入社約10年以後の社員です。制度開始からトータルで数百人が申請していますが、認定を受けたのは約2割。審査のステップで一番ハードルが高いのは書類審査で、通過率は5割を切ります。認定されると全社に氏名とインタビュー記事が公開されます。認定者はこんなバッジがもらえるんです(写真)。

――社員証につけているものですね。金・銀・銅と3つのランクがあるのですか。

宮田:はい。名刺にも入れています。今後、これをデジタルバッジにしようと思っています。そうすると社外にも「SOMPOオリジンのITサービスマネージャーです」というように広く公開できるようになっていきますので。

(出所:SOMPOシステムズ)

 この大がかりな制度を始めた時、大半の社員は「そんな大変なことはやってられない」「昇進がかかっているから仕方ないからやる」と肯定的とはいえない状況もありました。多くの労力を割いても認定されないかもしれない。認定されても、苦労した割に周囲の目が変わるわけでもない。でも、認定された時の大きなメリットは、翌年から審査員に加われることです。他の社員の申請書類を読む立場になると、大いに勉強になるのです。