新入社員だけのプロジェクト、失敗するから会得できる学び

――新入社員はこうしたオンライン研修を経て、「Fast Path」に取り組むわけですね。

宮田:Fast Pathは社内の人材情報ツールを新入社員だけで開発する業務で、今年で3年目を迎えます。

 3年前、私が新入社員研修を担当しはじめた時に大きな課題認識を持っていました。VUCAと言われるように社会は大きく変化しており、一つだけの正解が通用するわけではありません。新入社員には、変化に気づき、自ら問題を探り、解決策をできるだけ探し出し、その中で最善の策を選択し続ける行動をとるようになってほしいのです。画一的な研修で一つの正解を指し示してしまうとことは、あるべき行動とは反対の行動を助長してしまいます。

 一方で人事育成部としては、全社員が日常的に使う統合的な人材育成情報管理ツールが必要だと考えていました。5年前からパッケージをカスタマイズして活用していましたが、バージョンアップの問題などで使い続けることが困難になっていたからです。

 そこで、Project Based Learning(以下、PBL)手法を用いて「新入社員の新入社員による新入社員のためのプロジェクト」で、このツール「キャリアエスコート」の開発から運用までの一貫した業務を行うことにしたのです。

 名前の由来はディズニーランド®の「Fast Pass」です。並ばずにゲートがくぐれることをイメージしました。一般的にアプリケーションの開発から保守、インフラのメンテナンス、プロジェクトをリードすることを一通り経験するにはある程度の年数が必要です。Fast Pathでは、入社1年目にして「お客様」が存在するシステムを題材にコンパクトに凝縮した形で実践できる。また、「Pass」でなく「Path」にしたのは、与えられて大事に保管するpassではなく、キャリアの道のりを自分の足で歩き続けるイメージを持たせたいと考えたからです。

――「キャリアエスコート」にはどんな機能があるのですか。

宮田:すでに組み込まれている機能は4つあります。スキルチェックを可視化できること、キャリアプランが作れること、取得資格や受講した研修の履歴を確認、資格試験や研修申し込みができること、BYODでスキルチェックができることです。今後はスペシャリティ認定や人事評価をワークフローで運用し、「キャリアエスコート」全体のリファクタリングを行う予定です。

 「Fast Path」を立ち上げた2018年は、スキルチェック可視化の機能、キャリアプラン作成機能、研修管理機能を作り上げました。以前のツールに比べて大変使い勝手がよくなり好評でした。パッケージの保守費用削減にもつながりました。

 2019年の新入社員は人事DB機能、BYOD対応などを担当しました。また「キャリアエスコート」とは別に、自分で仕事や体調を毎日簡単に入力できるツールを開発しました。新入社員が毎朝、仕事や体調の状況をセルフスキャニングして直感的に入力することで、自身の状態を客観的につかむためです。結果的に、コロナ禍において新入社員のコンディションを把握するのに大きく貢献しました。

 今年は、研修で習得度が高かった4人が先行してスタートし、9月から全員で取り組みます。スタートで差をつけるには2つの理由があります。1つは先行する4人にいち早く高い目標に取り組んでほしいからです。習得度が高い彼らは研修でほとんど苦労していませんが、これは必ずしも良いことではありません。人は、目の前の壁に本気でぶつかったり悩んだりすることで初めて大きく成長できます。Fast Pathでそのチャンスを提供します。