ペーパーレス化で女性活躍が進む

――コロナ禍でリモートワークが加速し、定着した感があります。

辻: そうですね。新型コロナウイルスよりも前に大きな課題をクリアしていたことがリモートワーク推進に弾みをつけました。2018年に社屋を移転したのを機に、ペーパーレス化を実現したのです。きっかけは「旧本社ビルにある書類を積み上げると富士山の2倍の高さになる」とコンサルタントに指摘されたことでした。そこで「移転時に書類を現在の10分の1に減らす」と宣言。最初は「絶対に無理」と大反対を受けましたが、引っ越しですから、減らすしかないという思いで非常に大変な作業を実施しました。

 新しい本社ビルでは個室も個人ブースもなくし、完全なフリーアドレス制にしました。これはなかなか良い仕組みです。自分の隣の席に、今日は誰が来るか分からない。気心の知れた部下がいつもそばにいるわけでもない――。たとえ誰が隣に座っても、普段と変わりなく仕事をしなければいけないという緊張感が生まれます。効率よくテキパキ仕事をこなしてサッと帰っていく人の隣で、だらだら仕事するわけにはいきませんよね(笑)。

 実はこれらの改革が、女性の活躍にもプラスに働いたと感じます。重い書類の束を持ち歩かなくて済むし、固定の席ではないから周囲に気兼ねすることなく仕事が終わったらすぐ帰れる。「ペーパーレス化やフリーアドレス制が女性活躍に結び付き、さらに全社員の働き方も変える」――。私はそれを経験から学びました。

 D&Iだけを切り出して「D&Iについて議論しよう」と考えていると全体が見えません。逆に、働き方や高付加価値化、人材開発、クライアント対応など事業や経営全般を考えていくと、最終的にはD&Iに資する視点しか出てこないのです。

――2017年から、内閣府主催の「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」に参加なさっていますね。

辻:1回目の会合は新鮮でした。グループごとに自社の女性活躍について話し合うのですが、参加した男性社長たちがまず名刺交換した後「(この会で)私たちは、いったい何をすればいいのだろう?」と戸惑いを隠せなかったのです。そこで当社のD&Iの事例をお話しすると、先方のD&I課題なども率直にお話いただき、有益なディスカッションになりました。