デジタルトランスフォーメーション(DX)が急拡大する流れを受けて、サイバーセキュリティーの重要性が一層高まっている。サイバーセキュリティーソリューション事業を手掛けるグローバル企業の中で日本に本社があるトレンドマイクロは、台湾人女性のエバ・チェン氏がトップを務め、自然な流れで多様な人材を登用してきた。同社の大三川彰彦取締役副社長に、ニューノーマル時代を見据えた経営ビジョンや人事戦略を聞いた。(取材=大塚 葉:日経BP総合研究所 上席研究員、文=加納 美紀)

――コロナ禍で、DXを軸とした働き方改革が加速しています。御社の取り組みを教えてください。

大三川彰彦氏(以下、大三川):もともと日本や台湾はオフィスで働くのが一般的でしたが、米国西海岸などは出社と在宅勤務が併存していました。海外では個人宅で事業を始める小さな拠点もあり、リモートワーク自体は以前から始まっていました。日本でも東京五輪・パラリンピックに向けて意識やインフラを整備し、2019年からリモートワークを試行していたので、コロナ禍でもスムーズに在宅勤務を実施できました。

トレンドマイクロ 取締役副社長 大三川 彰彦(おおみかわ あきひこ)氏 <br> 1959年生まれ。日本大学卒業後、日本ディジタルイクイップメント(現日本ヒューレット・パッカード)、日本マイクロソフトを経て2003年トレンドマイクロに入社。日本国内での個人/企業ユーザー向けビジネスの総責任者として活動し、2012年より現職。現在は、国内ビジネスに加えグローバルのIoT並びにコンシューマービジネスの総責任者を務める。トレンドマイクロがMoxaと産業用IoTを保護する最先端ソリューションの共同開発を目的に設立したTXOne Networksの会長を務める。(写真提供:トレンドマイクロ)
トレンドマイクロ 取締役副社長 大三川 彰彦(おおみかわ あきひこ)氏 
1959年生まれ。日本大学卒業後、日本ディジタルイクイップメント(現日本ヒューレット・パッカード)、日本マイクロソフトを経て2003年トレンドマイクロに入社。日本国内での個人/企業ユーザー向けビジネスの総責任者として活動し、2012年より現職。現在は、国内ビジネスに加えグローバルのIoT並びにコンシューマービジネスの総責任者を務める。トレンドマイクロがMoxaと産業用IoTを保護する最先端ソリューションの共同開発を目的に設立したTXOne Networksの会長を務める。(写真提供:トレンドマイクロ)

――緊急事態宣言が発出されても、戸惑うことなく在宅勤務に移行できたのですね。

大三川:ただ、英語圏のサポートサービスを担う大拠点があるフィリピンは、少し事情が違いました。家庭内に通信インフラがあまり整っていなかったのです。コロナの感染拡大でロックダウンとなり、多くの社員が出社できない状態になってしまいました。そこで、すぐに千数百人の従業員宅の通信インフラを整えることで、サービスサポートを1日も止めず、カスタマーサティスファクションを下げることなく現在に至っています。

 コロナ禍でのDXの加速を、マイクロソフトのサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)は「2カ月で2年間分のデジタル変革が起きた」と表現しています。リモートワークでITインフラが変わるとサイバー攻撃の手法もどんどん変化するので、迅速な対応力が重要になります。クラウドの利用増加や新しいサイバー攻撃に、素早く的確に対応していかねばなりません。

 そこでわが社は今年のプリンシプルを「Wisdom(賢明さ)」「Empathy(共感)」「Bravely(勇気をもって)」の3つに定めました。デジタル化して終わりではなく、我々が持っているデータを活用してカスタマーサティスファクションの向上につなげたい。顧客の状態を可視化し、課題をとらえてデータを踏まえたアドバイスができる存在になりたい、と考えています。