――KPIを達成したのは、どのような施策が奏功したと思われますか。

吉田:まずはトップが改革にしっかりコミットし、働き方に関する会社からのメッセージをことあるごとに社内外で発信してきました。また様々な人たちが能力を発揮できるように、テレワークの拡充や休暇制度の柔軟化など時間と場所の制約を減らす取り組みを進め、フレキシブルな職場環境の整備に努めてきました。現場では業務を徹底的に棚卸しして仕事を効率化し、RPAなどのプログラムも使いながら業務の自動化を進めています。

 活動を推進する上で意識してきたのは、労働時間削減を目的化しないこと、また、全社一律の方法を強制しないことです。弊社は事業部制を取っているため、各事業部で文化が異なります。もともと高い士気がある組織なので、それぞれの文化に沿わない一辺倒な施策でそれを毀損することは避けねばなりません。そこで事業部ごとの個性や独自性を生かしたアイデアを提出してもらったところ、各現場にフィットする施策となりました。自分たちの文化に合った表現の仕方であれば、現場でもすんなり納得してもらい進めやすくなります。そして各事業部の取り組みの結果を全社的に吸い上げることで、全社的な活動と現場の実態に即した事業部の活動がうまく循環しています。

社員のモチベーションを重視した施策を進める

――各事業部の状況に合わせて改善を進めることで、一人ひとりが働き方改革を自分ごととしてとらえることができたわけですね。

吉田:そうです。また同時に、テレワークの拡充、休暇制度の柔軟化など勤務の柔軟性を高める制度整備も行ってきました。ただ、いくら制度を整えても気持ちよく使えないのでは意味がありません。在宅勤務制度や男性の育児休業などを「気兼ねなく使える土壌づくり」という、ソフト面の変革にも取り組んでいく必要があると思っています。

 ダイバーシティで重要なのは、多様な人材を適材適所で配置し、それぞれの特性を生かして最大限のバリューを出してもらうことです。それは、働く充実感やワクワク感にもつながります。そのためには、上司が適材適所のアサインメントをきちんと行うことが重要だと考え、今年度から部長層以上のトレーニングに力を入れています。

 弊社のダイバーシティ経営は、まずは女性活躍推進を中心に取り組みを進めてきました。キャリア研修に加え、女性を引き上げるための意識改革といった活動も行ってきましたが、それだけでは女性活用は進みません。管理職である上司、特に男性の意識改革を進めていくことが重要です。上司は「男女で差別はしていない」と思っていても、気づいていないだけで「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」がある場合があります。「制約を抱えた人にこんなアサインをするのは無理だろう」とか「女性には負担が重いのではないか」と気遣うあまり、逆に女性の活躍の機会を奪ってしまうこともあります。そうした気づきを促すために、育児休業復職者とその上司の組み合わせで研修も行いました。

――アンコンシャス・バイアスは、女性活躍推進の阻害要因の一つでもあります。

吉田:「無意識の偏見」なので、自分では気づいていないけれど、誰もが持っているものと言えます。併せて女性社員には、「仕事と家庭のどちらかを諦めるということなく、自分の欲しいものを望むようにしましょう」と意識づけを促しています。能力があるのに、女性であるがゆえに昇進を諦めているとしたら、もったいないことです。そうした女性たちの悩みに乗ったりアドバイスしたりする機会を作るため、今年から女性の部長職によるメンター制度も取り入れています。