――米アプライドマテリアルズとの経営統合契約をきっかけに、2017年から2018年にかけて組織や人事制度を刷新したのですね。

長久保:2013年にアプライドマテリアルズと経営統合契約を締結し、1年半の協議を経て2015年に契約解消となりましたが、その経験から「これからの世界で当社がさらに飛躍するためには、人事制度の見直しが不可欠」と感じたのです。

 以前から成果主義型の給与体系を採用していますが、一部において能力主義型の給与体系の運用が残っていました。しかし多くの欧米企業の考え方は「人材マーケットは会社の枠を超えたグローバルな市場。ポジションありきで、最適な人がいれば採用する」というジョブ型でした。日本企業に多いいわゆるメンバーシップ型とジョブ型のどちらにもメリットとデメリットがあり、一概にどちらが優れていると決められるものではありません。当社が中長期的にさらなる飛躍のタイミングにある今、欧米企業のベストプラクティスも参考にグローバル基準の人事制度にしようという結論に至りました。

 そこで、TELの現地法人も含めグローバル共通の等級制度「GTC(Global TEL Career-path)」の設定を行いました。GTCでは職種と職責が明確に定義されており、国やグループ会社間をまたいだチームワークやコラボレーションを容易にするという強みがあります。さらに上位のキャリア機会がGTCによって可視化されたことで、一人ひとりがオーナーシップを持って自身のキャリア開発に取り組めるという効果もあります。

――御社は伝統的に人材を大事にする風土があります。新人事制度は、貢献した人にきちんと応える考え方を体現したものですね。

長久保:創業時から会社の資産とは人、価値創出の源泉は社員であるという理念がありました。ビジネスパーソンとして魅力的で、すべてのステークホルダーから好かれ、能力を伸ばせる人を採用し、育成したい。そのためには、人事はフェアでなければいけません。また、個々のタレントを最大限に発揮してもらい、ビジネスサクセスにつなげていくため、ラインマネジメントへ進む道だけではなく、いわゆる高度専門職としてキャリアアップを図っていくパスも用意しています。

タフなストレッチで社員のタレントを発掘

――新人事制度導入から約2年経ち、社員の意識改革は進んだと思います。今後のキャリア育成や人事戦略の目標はありますか。

長久保:グローバルで約1万3000人いる社員の適材適所の配置、キャリア支援を目指しています。会社全体をグローバルのポジションを俯瞰し、「将来こうありたい」という姿に見合うキャリア機会と、会社が理想とする組織デザインとを、最適な形でマッチできるような個々のタレントマネジメントを行っていきます。

――タレントマネジメントの実現に向けて、ベンダーのシステムなども活用していますか。

長久保:2018年にクラウドベースの財務・人事管理ソリューションシステムのWorkdayを導入し、グローバルでのタレントマネジメントをさらに加速して推進しています。現在は全社員の最適な配置、タレントアロケーションの形を経営陣が話し合いながら模索しています。2019年に策定した中期経営計画を実現するための組織のありよう、求める人材について具体的な話を進め、Workdayをさらに有効活用していきます。

 タレントを管理して潜在能力を見える化し、その人に合った仕事をアサインしていく。合う、合わないはやってみないと分からないし、一発でうまくいくとは限りません。でも失敗しても経験値になるし、間違いなく度胸もスキルレベルも上がります。社員も「言われたことは何でもやります」ではなく「できそうなことは何でもやります」と意識が変わってくると、会社の推進力はさらに上がってくると思います。

 また、時にはタフなストレッチ目標や仕事をアサインすることもあります。それまでと違う環境に入ってもらい、挑戦してもらうことが本人にとっても会社にとっても成長につながるはずです。