――大事な取り組みですが、これができている企業はなかなかないでしょうね。御社の具体的な施策をお教えください。

綱場:カルチュラルトランスフォーメーションで重要な要素の一つに、「誰の目から見ても分かるシンボリックなことをする」ということがあります。当社は2015年にこのオフィス(虎ノ門ヒルズ)に移ってきた時に第10回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)の奨励賞を受賞しました。受賞理由として挙げられたのが、フリーアドレスの採用やオープンオフィス、社長室や役員室の撤廃などでした。

オープンオフィスでの業務風景

 ただ、オープンオフィスやフリーアドレス、社長室をなくすなどの施策は当初は非常に斬新なものでしたが、今では他社でも一般化しています。

 「革新的な職場環境で革新的な働き方をしない限り、革新的な人材は育たない」というのが私の信条ですが、革新的な職場環境も時間の経過とともに陳腐化していきます。そこでこの7月(2019年)から社長の固定席もなくして、私もフリーアドレスで仕事をします。私だけでなく部長も含めて、他の管理職の固定席も取り除きます。

 また今ではフリーアドレスという考え方ですら古くなってきており、これからは「アクティビティベース」という考え方にシフトしていきます。個人作業に集中したい社員は「フォーカスブース」で、静かなところで集中したい社員は「クワイエットスペース」で、他の部署の方と議論しながら業務を進めたい場合にはオープンエリアでという具合に、それぞれの働き方や業務の内容に応じた多様な職場環境を整えるということです。当社もすでにこの方向に舵を切っています。

 私自身、最初の2年間は風土の改革に注力してきました。企業文化の改革は終わりのない挑戦ですが、風土に関しては少しずつでも成果が見えてきました。さらに企業文化の改革を進めるためにも、これからはよりハード面での職場環境作りとソフト面での制度の整備にも注力して、さらにシンボリックな変革をしていきたいですね。

運動しながら業務にあたれるアクティビティスペース

女性が持続的に活躍できることが重要

――ダイバーシティの一つ、女性活躍推進について、御社は「日経ウーマン」が発表する「女性活躍ベスト100」で、昨年の23位からさらにランキングアップし、今年は15位でした。何が奏功したと思われますか。

綱場:順位を上げることが目的になると本末転倒ですので、順位に関してはあまり意識しないようにしています。それよりも、女性が活躍する環境の持続可能性(サステナビリティ)が重要であると思っています。

 例えば女性の管理職比率を上げることに注力しても、女性管理職が活躍できる環境やサポートを我々が提供できていなければ、活躍の機会を早晩に逸してしまうことになり、会社にとっても彼女たちにとっても不幸になります。

 とくに製薬業界の大きな課題は、女性営業職の管理職が育っていないことです。地域の営業所を統括する営業部長(=支店長)に女性がほとんどいない、ロールモデルとなる女性管理職がいないために、後進も育たないという負の循環に陥っています。

 そこでまず、本社や事業部長が細かくサポートできるように女性リーダーを東京から近郊の営業部長に起用しました。通常は7、8つの営業所を1つの営業部(支店)で管轄しますが、女性管理職育成の観点から営業所数を少なく設定し、新任女性営業部長に負担がかかりすぎないように配慮しました。おかげさまで現在、彼女は全国統括の営業本部長に昇進し活躍しています。女性の全国営業統括本部長のケースはおそらく製薬業界では非常に珍しいと思います。このような例が今後も増えて、女性が活躍できる職場環境を持続的に提供できることが大事だと思います。