――ダイバーシティ推進は、トップのコミットメントが最も大事ですね。それでも、実際に施策を進める際の難所はありましたか。

及川:女性社員が多い弊社でも「男性社会の空気感」はあり、女性が意思決定の場に参加できなかった時期もありました。

 私は販売部門でリーダーを務めましたが、30代の女性リーダーは珍しい存在でした。よく言えば周囲から大事にされたのかもしれませんが、他の男性リーダーから微妙に距離を置かれている感じも受けました。当時は子育て中で飲み会にもあまり参加できず、飲みながらの情報交換もできなかったので、自分から情報を取りに行く努力をしないと男性と同じ土俵に立てない、と感じていました。

 ただ当時の本部長が女性登用に積極的で、様々なアドバイスをくれましたし、きちんと叱ってくださる方がいたことも心強かったです。私のことを「この女性社員が潰れたら、後に続く女性の道が閉ざされてしまう。彼女をロールモデルとしてしっかり育て上げよう」と考えてくれたのだと思います。

――ご自身を「叱られ上手」とおっしゃっています。叱られることで鍛えられる部分があると思います。ただ男性上司などからは、「女性を叱るのは難しい」という声も聞きます。

及川:男性部下は厳しく叱れても、女性部下には言いづらいと思う上司もいるようです。でも、きちんと叱らなければ社員を伸ばせません。女性部下にも男性部下と同じように期待することが大事ですし、部下が仕事をうまく進められなかった時、頭ごなしに怒るのではなく、できなかった理由を一緒に考えることが大切です。

 私が上司から男性と同等に扱ってもらい、叱ってもらえたのは、やはりトップ層が女性活用のイメージをはっきり持っていたからでしょう。弊社のダイバーシティもまだ課題はありますが、女性管理職が30%近くに達したのはトップ層の意識が脈々と受け継がれてきたからだと思います。

「あなたにリーダーを任せる理由を5つ挙げてみます」

――このように女性登用が進んでいる御社でも「管理職候補に女性がなかなか上がってこない」とおっしゃっていました。

及川:管理職候補のリストを出してもらうと、力のある女性の名前が載っていないことがあります。リストを見て私が「〇〇さんはどうして入っていないの」と聞くと、「本当ですね。及川さん、よく彼女に気づきましたね」と言われることもありました。

 管理職候補として、まず男性を選んでしまう風土が根づいているのかもしれません。悪気があるわけではなく、男性にとっては自分の近くにいる男性部下が目につきやすいのかもしれないし、優秀な女性の存在に気づいていないのかもしれません。また、「彼女は子育て中だから無理だろう」といった理由で女性をリストから除外していることもあるようです。

 トップの女性活用への意思が固くても、それがマネジメント層に降りていくに従って、部門長や課長による「男性視点の無意識なフィルタリング」にかけられてしまっているのです。