――女性を気遣い過ぎて重責を任せないのは、まさに「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」です。

及川:日本社会では、男性目線のフィルターで漏れてしまわないように、フラグを立ててあげないといけない女性は多いのだと思います。今私は、企画職と業務職の評価には役員3人と一緒にすべて目を通しています。突出して評価が高い人と低い人に関しては、理由を確認しています。

 また出産や育児、不妊治療などを理由に昇進を辞退する女性には、「まずはリーダーになってみて、今後のキャリアを考えてみては」「不妊治療と並行して業務に向き合うには」などと共に考えてあげられる会社でありたいと思っています。

――一方で、抜擢しても「私にはできない」と戸惑う女性もいます。女性のマインドセットを変え育成することも課題ですね。

及川:おっしゃる通りです。部下に面談で昇格を伝えると、男性からは「ありがとうございます、頑張ります」と100%ポジティブな返事が返ってきます。ところが女性はほぼ全員が「どうして私なのですか」と聞いてきます。私から「あなたにリーダーを任せようと思った理由を5つ挙げますね」と説明しなければいけないこともありますよ(笑)。女性は男性に比べ、真面目で自己評価が低い傾向があります。そのような場合は、背中を押してあげる必要があります。

 女性部下から「及川さんのようには(管理職の業務を)できない」と言われたこともあります。女性は理想の姿と現実の自分を比べて「自分はまだ足りない」と思ってしまうのでしょう。そんな時は「今できなくても、できるようになればいいのよ」「今育児で忙しいとしても、5年、10年後に自分がどうなっていたいか考えてみよう」「子供の手が離れた時に課長として活躍できるのでは?」といったように、長期的視点を持ってキャリアを考えるように勧めています。

 女性リーダーの数がもっと増えて、「こういうリーダーでもいいんだ」「子育てしながらでもできるんだ」といったバリエーションが出てくることを期待しています。

様々な制約を取り払い、多様性を広げる

――ダイバーシティに関しては、女性だけでなく外国人、シニア、障がい者、LGBTなど様々な方との共生が必要になります。御社は「平成26年度ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれています。

及川:「社員は全員バリュー・クリエーター(価値を生む人)」が弊社のコンセプトなので、社会的制約があっても可能性を狭めないというのが、人事とともに推進している大きなテーマです。育児・介護に携わる社員も多いので、職場復帰サポート、男性の育児参加、フレックス制度や介護時短、介護サービス利用の特約なども設定しています。病気も制約になるので、「ガンになっても働きたい」という社員やビジネスパートナーの声を受けて、2018年4月に「がん共生プログラム」を完成させました。ガンへの理解を深めて認め合い、安心して治療や看護に専念できるように心のケアや治療支援、リモートワークの活用などを整備した制度です。

 非正規からの転換やコールセンター社員の昇格など、複線型キャリアの制度も作りました。100歳でも働いているビジネスパートナーもいるので、定年後再雇用の上限年齢も2018年7月から撤廃しました。

 障がい者雇用も行っています。バリバリ働いていた社員が病気によって半身が不自由になったのを機に、障がい者用の駐車スペースやトイレなどの整備をさらに進めました。今後も、まだ私たちが気づいていない制約が出てくるかもしれません。その意味で、ダイバーシティへの取り組みは、終わることはないでしょうね。