自分の専門性を捨てて何ができるかというチャレンジ

――別の海外派遣型のグローバル人材育成施策というと、ウィル・シードさんには「海外プラクティカルトレーニング」があります。

藤森:自社に海外拠点がない企業の場合、受け入れ先企業を探したり人材育成への協力を得るのが難しい。それなら、全く関係がない第三者企業に派遣した方が本人たちの成長になるのではないか。それでゲリラ的に商品化しました。私たちが派遣先企業を探し、現地に行ってその社長と話してみて、この人たちと働けば学びがありそうだという企業を開拓しています。アセアン地域が対象で業種は様々です。

――派遣者と受け入れ先企業のマッチングから関わるのですね。

藤森:あえて海外の、しかも異業種の企業に派遣して、未来のビジネスを探す経験をしてほしいと考えています。「自分の専門性を捨てて何ができるか」という挑戦でもあります。当社がお手伝いした例では、第一生命保険様、東京海上日動火災保険様など、非製造業の企業は異業種・異職種での体験や研修に力を入れていると感じます。

 例えば、保険会社という業態では、人口が減少していく日本で新しい市場は作ることは難しい。グローバル化を視野に入れるには異業種を見なければいけません。自社ビジネスと離れた経験ができるからこそ、グローバルな視点を持たせるきっかけにしたいと取り入れる企業も多いです。

――派遣者にとってはなかなかタフな体験ですね。

藤森:はい。海外トレーニー制度のように自社拠点に送るわけではないので、派遣元企業も覚悟が必要です。派遣者の状況は「修羅場」です(笑)。目的は、海外で英語の環境、しかも異業種、職種も違うという中でもビジネスに貢献できたという成功体験をすることです。エントリー層を対象に数週間~1カ月程度で実施する例が多いですね。

――GBN(前回参照)でいえば、初心者のレベルを体験してくるわけですね。

藤森:はい。海外トレーニー制度と違って入社3年目の社員全員など、大勢の社員が体験してくるイメージです。

 また、次世代リーダーを見込んで選抜した派遣者を何カ所かの海外プラクティカルトレーニングに送る例もあります。まず、アセアンの派遣先企業に数カ月派遣し、そこで見つけたテーマを持って、米国・シリコンバレーに行ってデザインシンキングの手法を使ってビジネスアイデアを考える。ふたたびアセアンに戻って、そのアイデアを現地の人たちを巻き込みながら実現できるかチャレンジするというケースもあります。世界中に散らばっているアイデアを持って帰ってこられるのかというチャレンジです。これは、企業の中から選抜された若手リーダーに取り組んでもらっているプログラムです。

「グローバルビジネス意識」が次世代リーダーの要件

――藤森さんに取材をお願いする際に見ていただいた、ヒューマンキャピタルOnline読者アンケートでは、グローバル人材育成に対する課題感の低さがあります。この要因の一つには、日本企業でのリーダー育成の遅さ、意識の低さがあるように思います。

「ヒューマンキャピタルOnline読者アンケート」(2019年3月実施)より
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