根本的な問いが出てくるようになる

――参加者一人ひとりが感じる、それぞれの「美しい」が見えてきた後、どのようにメインテーマにつなげるのでしょうか。

石田:自分の心を深堀りして語彙が増えると、従来の延長線上ではない新しい思考に切り替わります。そこで初めて、当初のお題について議論します。日程の最終日に近い頃ですね。

 その頃までには、思考が変わるのはもちろん、都会の灰色の部屋に浸かりきりだった頭がリフレッシュされて、相当ほぐれている。すると、例えばモビリティーであれば「そもそも移動とは人間にとってどういう意味があるのか」とか、「そもそも人に頻繁に移動させるような社会や経済がこれからもずっと続くのだろうか」とか、それまでまるで疑わなかった前提や概念について、根本から問い直せるような発想が出てきやすくなるんです。

 そうした問いや発想が出てきてからが、ようやく本番です。そこから未来に起きうるシチュエーションや制約条件を考え、未来の社会課題を見据えた解決法を考えていきます。これがいわゆるイノベーティブなアイデアにつながるわけです。

――語彙が増えていない状態でイノベーティブなことを考えようとしても、従来の延長線上でしか物事を考えられないので、そもそもイノベーションにならない。となると、沖永良部島にまで足を運び、一見ビジネスと関係ないようなことをひたすら深く考え、語彙を増やすことを通じて石田さんのおっしゃる直感力を取り戻すというのが、キーポイントになっているのですね。

石田:そうなんです。この島には都会の人たちが普段見ることができない世界があります。

 この島は、「思考の場」を変えます。また、思考の場を変えるというこの島の力は、日本の文化が濃い場所であるということに基づいているのではないかと思っています。

沖永良部島では近年、過去に減反政策でストップしていた稲作を復活させた(写真提供:石田氏)
沖永良部島では近年、過去に減反政策でストップしていた稲作を復活させた(写真提供:石田氏)