良き日本文化が残る土地、それが思考の支えに

石田:私は東北大学にいた時、「90歳ヒアリング」というプロジェクトを実施しました。全国にいる90歳前後のお年寄り約400人にヒアリングし、現代にも通じる良き知恵を抽出、44の「生活原理」としてまとめたものです。生活原理には例えば、「自然に寄り添って暮らす」「最後の最後まで使う」「分け合う気持ち」といったものがあります。

 2012年から2013年にかけて沖永良部島でも90歳ヒアリングを実施しました。その結果、島には44のうち29もの原理が存在していたことが分かりました。これは他の地域に比べて圧倒的に多い。私は22年間沖永良部島とか関わっているのですが、この結果が出て、なぜ私が沖永良部島に通い続けているのか、その理由がやっと見えたのです。

 私は、従来型の資本主義を否定するつもりはありません。ただ、従来のやり方はもう限界だと言いたい。これからの時代、次世代に地球を残すためにも、資源が限られた中で社会を運営しなければいけません。

 この島で農業などに従事しているおじい・おばあは、70歳代でも本当に元気で、笑いが絶えず、普通に仕事をしています。働ける人は年をとってもどんどん働く。働けなくなったら、周りの人が助ける。まさにコミュニティーがここにあるんです。

 環境問題や少子高齢化など様々な制約条件がある中で、皆が心豊かでワクワクする社会生活を実現するには、従来の延長線で考えても解決策は見いだせません。一方、ここ沖永良部島には、今の日本が失い始めている、日本の古き良き文化が色濃く残っています。

 この島だからこそ確立してきた、未来を示すモデルがある。都会のまねでも受け皿でもない。資源も文化もこの地域の中で自足させられる。新しいビジネスが立ち上がり、雇用も確保できる。年をとってもみんなが笑顔で暮らせる。そのような新しい日本の地域モデルを、この沖永良部島から発信していきたいと考えています。