答えを出すことを急がない

井尻:ビジネス哲学対話にはいくつかの指針があります。「答えを出すことを急がない」「合意形成を目的とはしない」「考えが変わることを良しとする」といったものです。

――ビジネスの世界における議論とは、だいぶ趣向が異なりますね。

井尻:はい。ビジネスパーソンの方々におけるミーティングは、「合意を形成する」「結論を出す」といったようなゴールを明確に設定し、それに向けて手際よく議論することが一般的だと思います。そのため、ビジネス哲学対話に参加したビジネスパーソンの方々はおしなべて、「いつもの仕事でのミーティング」とは違う体験をすることになるはずです。

――どのように哲学対話を進めるのですか。

井尻:典型的かつ基本的な進め方をご紹介しますと、ビジネス哲学対話では10人前後のグループをつくり、その1グループにつき1人、ファシリテーターがつきます。ファシリテーターは私たちアーダコーダのメンバーが担当しますが、ある1000人規模の企業様からは「ビジネス哲学対話を全社に展開したい」というご相談を受けておりまして、社内にファシリテーターを養成しようという計画を進めています。

 ビジネス哲学対話に入る前に、参加者の皆さんに対してあらかじめ対話のルールをご説明します。ルールの中身は、先ほど挙げたビジネス哲学対話の指針に基づいたものです。その後にいよいよ対話に入っていきます。対話の時間は1回あたり2時間前後が基本です。

 テーマは、実施したい企業様のご要望次第です。業務とは全く関係のないテーマ、例えば「幸せ」について、皆さんで2時間徹底的に対話する、というケースもよくあります。

――ビジネスの視点から見るとあまりにも抽象的なテーマですが、それでも良いのでしょうか。

井尻:はい。このビジネス哲学対話では、正解が一つではないようなテーマについて、「本当に?」「そもそも?」「なんで?」「立場を変えたら?」といった質問も交えながら、じっくり、ゆっくり、粘り強く考え、深く対話をしていきます。これにより、参加者はそれまで当たり前だと思って疑わなかったことについて、また別の見方が促されるわけです。その結果、自分の考えやものの見方を深めたり、広げたりしていくことができます。これがまさに哲学対話の特徴です。

 ビジネス哲学対話を進めるうえで重視しているのは、「セーフティな場」を用意するという点です。ここについては私たちアーダコーダがいろいろなノウハウをご提供しています。