結論を急がないからこそ本質に迫れる

――体験した企業からは、どんな感想を寄せられていますか。

井尻:社員の皆さんからは、まず「楽しかった」という第一声を頂くことが多いです。

 私たちは企業向けには「チームビルディングの機会になる」「リーダーシップの発揮を促す」といった説明をしています。参加者からは「同僚とこれだけじっくり話す機会などなかった」「他の社員の考え方を知ることができた」という感想もよく頂戴しますので、これらに類する効果は期待できると思います。

 ほかにも「自分の考えがはっきりした」「自分の考え方のクセに気がついた」「他者の視点が役に立った」「視野が広がった」といった感想もあります。「自由になった」という興味深い感想を頂いたこともあります。

――他者とじっくり対話することで、自分の考えを相対化でき、それによって考えがより明確になったり、思考のクセに気がついたり、といったことが起きたわけですね。そうした体験は普段の業務にも生きそうです。

井尻:1回体験していただくだけでも効果が期待でき、実際、過去に実践していただいた企業様から「あれは良かった」という反響を後で頂戴することも度々です。ただ、私たちとしてはぜひ、このビジネス哲学対話を定期的に実施していただきたいと思っています。スポーツでも練習を積むことで体力がつき、技能が高まります。哲学対話も同じように繰り返し体験することで技能が高まり、効果も高まることが期待できるからです。

 企業での実務経験が豊富なアーダコーダのファシリテーターは、「結論を急がないからこそ本質に迫れる、それがビジネス哲学対話の最大のポイントだ」と言っています。

NPO法人 こども哲学・おとな哲学 アーダコーダ理事 井尻貴子(いじり・たかこ)氏。アート、哲学に関わるプロジェクトなどの企画、運営、コーディネート、記録編集執筆などを行う。大阪大学大学院文学研究科(臨床哲学)博士前期課程修了。財団法人たんぽぽの家、公益財団法人東京都歴史文化財団東京文化発信プロジェクト室、NPO法人多様性と境界に関する対話と表現の研究所などを経て、現在に至る。共著書に『哲学カフェのつくりかた』(大阪大学出版会、2014年)、共編書に『病院のアート - 医療現場の再生と未来』(アートミーツケア学会、2014年)、著書に『こども哲学ハンドブック 自由に考え、自由に話す場のつくり方』(アルパカ、2019年)。<br/> NPO法人 こども哲学・おとな哲学 アーダコーダ (http://ardacoda.com/)<br/> (写真撮影は筆者)
NPO法人 こども哲学・おとな哲学 アーダコーダ理事 井尻貴子(いじり・たかこ)氏。アート、哲学に関わるプロジェクトなどの企画、運営、コーディネート、記録編集執筆などを行う。大阪大学大学院文学研究科(臨床哲学)博士前期課程修了。財団法人たんぽぽの家、公益財団法人東京都歴史文化財団東京文化発信プロジェクト室、NPO法人多様性と境界に関する対話と表現の研究所などを経て、現在に至る。共著書に『哲学カフェのつくりかた』(大阪大学出版会、2014年)、共編書に『病院のアート - 医療現場の再生と未来』(アートミーツケア学会、2014年)、著書に『こども哲学ハンドブック 自由に考え、自由に話す場のつくり方』(アルパカ、2019年)。
NPO法人 こども哲学・おとな哲学 アーダコーダ (http://ardacoda.com/)
(写真撮影は筆者)

 いわく、ビジネスの現場においては限られた時間で結論を出すというスタイルが当たり前で、急ぐことでかえって浅い結論を出しがちだ、と。けれどもビジネス哲学対話では2時間というまとまった時間を使ってじっくり対話するからこそ、本質に迫れる可能性がある、というわけです。