よくあるケースとしては、まず「職場の満足度調査」などのデータから仮説を立てて、そこから慎重に周辺の社員などへの聞き取りに入り、より詳細な実態を把握する。パワハラをしているとおぼしき人物がある程度特定できた場合には、本人からも状況を確認し、十分に話し合ったうえで個別のコーチングやトレーニングを受けることを勧め、行動変容を促していくようなこともする。この時のポイントは本人に対して、その目的や会社は本人にどうなってほしいのかという期待値を明確に伝えることである。

 「備え」は社員が通報できる専門窓口を設けたり、罰則規定などのルールを設けて防止策を講じることを指す。

 最後の3つ目のステップ、「フォローアップ」とは万一ハラスメントの事案が起きた場合の即応体制づくりを指す。これらはいずれもパワハラ防止法の義務事項でもあり、企業には不足のない対応が求められる。

 大企業は、この6月から適用されるパワハラ防止法のことを認知しており、予防や備えについてはおおむね整備が進んでいるという。ただ、フォローアップ、つまり事案が発生した場合の対応体制の整備については「まだ積み残しとなっているケースも見受けられる」(吉野氏)

ピースマインド株式会社 事業推進室長兼組織ソリューション部コンサルタント
公認心理師 臨床心理士 吉野学(よしの・まなぶ)氏
横浜国立大学で経営学、放送大学、東洋英和女学院大学大学院で臨床心理学を修める。大手不動産デベロッパーで長年経営企画業務を担当。ヘルスケア事業の立ち上げに関わったことを契機にメンタルヘルスケア業界に転身。経営コンサルティングファームを経て、ピースマインドに入社。営業部長を経て、現職。100社を超える企業に対して職場改善支援を実施。

 特に、ハラスメント事案が発生した場合の当事者のケア、その周囲にいた同僚社員へのケア、ハラスメントを受けた社員が休職した場合の復帰支援などについてはきめ細かい対応が求められる。こうした支援を人事部門や労務担当のメンバーだけで担うのは荷が重く、ピースマインドなどの専門会社に支援を依頼するケースも少なくないようだ。こうした事案を処理していくなかで、自社のパワハラ対策を強化すべきことに気付き、「パワハラ事案の再発を防止するべく、さらに深いコンサルティングや個人の行動変容に対する支援などの要望を寄せられるケースもある」(吉野氏)