これらの方法の有効性を検証するため、調査対象となる国際便NIHグループのグランドスタッフを3つのグループに分け、それぞれアプローチを変え、睡眠の記録をしてもらった。1つ目のグループは2breatheによる呼吸法と、睡眠教育を実施した。2つ目のグループは、2breatheによる呼吸法のみ。3つ目のグループは比較のため何もしないというグループ。結果、呼吸法と睡眠教育のグループ、つまり、睡眠教育と呼吸法の組み合わせによって有意な変化が起きることが判明した。

 東大大学院の下山教授は研究結果を踏まえて次のように語る。「朝型や夜型といった体質に合ったシフトを組むことで、パフォーマンスの低下を防止できると考えられる。さらには呼吸法やその人に合った睡眠のコツをしっかり教育することで、睡眠の質の向上はもとより睡眠から起因する体調不調が低減し、パフォーマンスの低下をさらに防げるようになるだろう」

 今後の検討ポイントとしては、睡眠教育の中身をブラッシュアップすること。今回提供したプログラムはいわゆる日勤社員を対象にした内容のものだった。ANAエアポートサービスの公認心理師である大井葉月氏は、「シフト勤務の従業員にふさわしい内容にすれば、より効果が見込めるのではないか」と語る。

「クレームに距離を置く」ことを意識

 2つ目に紹介する研究は、「クレームレジリエンス」である。レジリエンスとは精神的な傷から回復する能力を指す。社内においては以前から、顧客からのクレーム対応が精神的に大きな負担となることが挙げられていた。

 そこで研究では、クレーム対応に慣れていない入社1年から3年目のグランドスタッフを調査し、クレーム対応と心理的な負担の裏側にある関係性を分析した。その結果、次のような構図があることが分かった。顧客の態度に恐怖を感じ、要求にうまく対処できないようになる。クレーム対応時のネガティブな感情や、対応がうまくいかなかったことに対する申し訳なさなどを引きずったまま別の旅客に対応し、さらにミスを招く。自信を失い、ともすれば離職・転職への意向につながる、といったものだ。

 一方、経験を積んできた入社4年から6年目のグランドスタッフ12人、そして国内線のコンシェルジュ(多頻度顧客に対応しているベテランのグランドスタッフ)10人を調査したところ、入社5年目から6年目頃に、次のような好循環を経験していたことが分かった。顧客のネガティブな態度を目の前にした際に、いったんクレームと距離を置いて冷静になる。その後に自分が持っている知識やスキルを発揮して代替案などを提示し、旅客からかえって感謝されたり、同僚などから褒めてもらったりすることが仕事への自信につながり、さらなるスキルアップを志す。

研究テーマ「クレームレジリエンス」で見えてきた、新人とベテランにおけるクレームの捉え方の違い(出所:東京大学大学院下山研究室)
研究テーマ「クレームレジリエンス」で見えてきた、新人とベテランにおけるクレームの捉え方の違い(出所:東京大学大学院下山研究室)
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