――どのようにインクルーシブデザインの要素を取り入れたのですか。

井坂:企業向けのワークショップと同じように、学生同士で7人前後のチームを組ませます。リードユーザと一緒にチームごとにフィールドに出て、社会の中の問題を観察させ、それについて意見を出し合い、各自のアイデアを組み合わせながら1つの解決策をまとめあげてもらうのです。

 グループから1つの解決策を出す際には、次のようにします。まず、1人がアイデアを出す。次の人は前の発表者の意見を踏まえてアイデアを出す。さらに次の人は前の2人のアイデアを盛り込んだアイデアを出します。そうすると、グループが出すアイデアには全員の意見が盛り込まれます。これはチームビルディングの訓練にもなります。

 こうしたスタイルで学ぶと、一人ひとりの学生が仲間の意見に耳を傾けるようになりますし、社会にある様々な話題に対する興味・関心が刺激されます。そのため、自分から知識を得たいと思うようになります。これは従来型の大学教育にはなかったスタイルです。卒業する頃には、本当に見違えるほどに変わります。私はそれを間近で見てきました。

 ところが世間をみると、いまだに企業の新卒採用では相変わらずエントリーシートと大学名で選別しています。これでイノベーティブな組織がつくれるのかと疑問を持たざるを得ません。違う価値観を持ち込まなければ新しいものが生まれないからです。

 ある大手企業の新入社員研修で、このインクルーシブデザインによるアクティブラーニングを取り入れています。まさにエントリーシートと大学名で選別された、トップ大学出身者ばかりなのですが、私に言わせれば、出てくるアウトプットを見ると名古屋商科大学の学生の方が発想力豊かです。

 もちろん大手企業の新入社員の方が、プレゼンとしては上手にまとめます。けれども従来型の学校教育の範囲でうまくまとめた印象です。しかし一番の懸念は、「いかにライバルよりも良い点数を取るか」という考え方に基づいた発想が見え隠れすることです。そのような考え方では、社内でいいチーム作りはできません。

――切磋琢磨する雰囲気であればいいでしょうが、ライバルを蹴落とすような雰囲気は避けたいですよね。

井坂:だからこそ、この企業は危機感を抱いてこのような研修を実施しているんです。しかし私は、そもそも入社前の選抜方法を変えない限り、なかなか難しいのではないかとも思っています。

 最近では小学校でインクルーシブデザインのワークショップを展開中です。小学生の頃からリードユーザと一緒に行動し考える姿勢が身に付けば、社会の雰囲気は大きく変わるのではないかと考えています。