海外の各リージョンが独立経営を進め、マルチナショナルカンパニーへと舵を切る資生堂。テレワーク拡大を追い風に、人材マネジメントの変革を加速する。2020年1月、国内の一部の管理職約1700人を対象に導入した「ジョブグレード制度」を、2021年から一般社員約3800人にも拡大予定だ。そのジョブ型にも、完全な欧米流ではない特徴がある。「資生堂独自のジョブ型雇用」の要諦を、同社執行役員 チーフ・ピープル・オフィサー チーフ・ウエルネス・オフィサーの中村実氏に聞いた。
資生堂 執行役員チーフ・ピープル・オフィサー チーフ・ウエルネス・オフィサー中村実氏
1985年早稲田大学法学部卒業後、リクルートに入社。97年ジョンソン・エンド・ジョンソンに入社し、人事部人材開発次長を務める。マスターフーズジャパン(現マース ジャパン リミテッド)にて人事組織開発部長、 菓子食品事業部営業部長、同部事業本部長、ファーストリテイリングにて人事部長、組織開発部長を務めた後、2007年エスティー・ローダー(現 ELC ジャパン)に入社し人事部長に。2011 年Estee Lauder Asia Pacific Limited Regional Vice President, APAC HRを務める。2019年資生堂に入社しデピュティー・チーフ・ピープル・オフィサーに就任、2020年1月より現職(写真提供:資生堂)。

――話題を集めるジョブ型雇用を早々に導入し、注目を浴びています。導入に踏み切ったきっかけは何ですか。

中村実氏(以下、中村):当社には2つの課題があります。1つ目は生産性の低さです。今、資生堂の競合は日本企業だけでなく仏ロレアルや米エスティ・ローダーなどグローバル企業ですが、こうした企業に比べ当社の従業員一人当たりの生産性は残念ながら低いのが現状です。

 2つ目の課題は、欧米と日本の専門スキルの差です。当社は、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティカンパニー」を目指し、2016年にはグローバル成長を加速させるためCEOの魚谷雅彦が「地域本社制」を導入し、各リージョンに権限移譲する形に変えました。これにより、欧米やシンガポールなどのリージョンで働くメンバーは、各分野でのスペシャリストであることが明らかになりました。一方で日本本社では、伝統的にジェネラリストを育成してきたので、総合的な業務スキルは高いが特定分野の専門知識が低いメンバーが多いと分かってきたのです。

 「ジョブグレード制度」の導入は、こうした課題の解決を目指したものです。2015年には役割の大きさに応じて等級を設定する「役割等級制度」を作り、10月には国内の一部管理職に適用しました。

 ただこの時点では、仕事の内容に応じて報酬を決めるという点ではジョブ型に近いはずですが、実態は“能力のある人”をジョブローテーションするのに適した制度となっていました。例えば「前回この等級だったAさんは、別の職種に移っても同じ等級にする」というようなジェネラリスト型の運用が続けられていたのです。