成果主義の導入、メンバーシップ型への一時的な回帰、人事全領域の課題棚卸しと改善――。時代の変化とともに、常に「人材マネジメントの最適解」を模索し続けてきた新生銀行が、多様な人材を生かし組織力を最大化するために新たな施策を次々に打ち出した。ニューノーマルに向けた打ち手の詳細を、同行常務執行役員・人事担当の林貴子氏に聞いた。

――新生銀行は旧・日本長期信用銀行を母体に2000年にスタートしました。人材マネジメントの施策の歴史をお聞かせください。

林貴子氏(以下、林):旧・長期信用銀行時代は、新卒採用と長期雇用を前提とした「日本の伝統的な金融機関」でしたが、新生銀行になり大きく変わりました。経営陣の多くが外国人になり、専門性の高い即戦力人材を中途採用で積極的に採用し適材適所に配置するようになりました。部門制を敷き、ビジネス戦略の立案・実行や人事権など幅広い裁量権を部門長が持つ体制になったのです。

――いわゆる「ジョブ型雇用」を導入したわけですね。

林:実体としてはそうですね。私自身も2007年に中途入社しましたが、いわゆる“銀行員”ではないので、ジョブ型採用といえるかもしれません。この体制で事業拡大しましたが、状況が変わったのが2008年のリーマン・ショックのときです。2年連続の赤字を受け経営陣が刷新され、ジョブ型、成果主義といった「外資系流組織運営」から、メンバーシップ型、プロセス評価といった「日本型組織運営」の良い仕組みを、時代に合わせてカスタマイズして再導入しようとしたのです。

 当時は、全社利益より部門の短期的収益が優先され、組織はサイロ化し、社員の自立的なキャリア形成も難しくなっていました。また、年功的運用と市場価値による弾力運用が混在し、処遇(報酬・昇格・昇給)決定の基準やプロセスの不透明さ、公正性に不満を持つ社員が増えました。

 こうした状況を是正するために2012年以降は部門の権限を縮小し、新卒や若手社員に対して2~3年でのジョブローテーションを復活しました。職制を複線化し、自己申告やキャリア面談をベースにした異動設計も行うなど、一部、メンバーシップ型組織への回帰を行ったのです。部門制も2016年4月に廃止しました。これらの施策により人材育成面などで成果も上がりましたが、個々人の専門性の伸長や専門人材の市場価値向上とキャリアアップの点でやや後退した側面も否めませんでした。

新生銀行 常務執行役員・人事担当 林 貴子(はやし たかこ)氏 1985年日本輸出入銀行入行。89年に結婚退社し、配偶者の転勤に伴い南米コロンビアに帯同、出産。帰国後、広告宣伝会社などを経て2000年The Gallup Organization Japan入社、Project Managerなどを経てExecutive Director of Operation就任。2007年1月新生銀行入行。2017年人事年部長、2018年執行役員人事部長、2020年4月より現職。(撮影:菊池くらげ)

 このような歴史を経て2016年に工藤英之が経営トップに就任してからは、人事領域のあらゆる課題を棚卸しして改善する「総ざらえイニシアティブ」に着手しました。雇用の経緯や形態によらず公正で透明性が高いこと、年功での運用や長期雇用を前提としないことをポイントに、様々な改革を進めてきましたが、日本型組織の良い部分は残そうと考え、「成果を出しながら結果として最後まで当行で働き続けてもらうのはありがたい」と考えています。

 期待される役割に対して成果を出した社員を公正に処遇する、そのために整合性のある人事の仕組みを作ることが経営からのミッションです。様々な業務を広く浅く経験しながら最終的にマネジメント職になる社員がいてもいいし、特定の分野での専門性を高め純粋なジョブ型で働く人がいてもいい。ジョブ型でありながら経営を見る立場になる人がいてもいい。個々人の状況を見ながら柔軟に運用していこうと考えています。