「熱意と専門性」をキーに職務等級と報酬制度を見直し

――新人事戦略のポイントはどのようなことでしょうか。

江原:第一に、次世代金融への転換を図り、みずほのビジネスを強くするために、専門性が高く社内外で通用する人材の育成が必要と考えました。すなわち、人生100年時代を展望し、みずほで働いた社員が様々な分野で活躍できる人材となる仕組みをつくり、会社と社員で価値観を共有することを原点にしました。

 今回の新人事戦略では、「社内の閉じた競争原理――終身雇用と年功序列を前提としたポストの奪い合い――」を脱却し、「やりたい仕事による社員の成長」へ転換することが根底にあります。

 まず年次年功に基づく処遇を見直すことに着手し、次に職務等級と報酬制度の見直しを実施しました。30代半ばくらいになると経営職階になりますが、例えば営業店の支店長・副支店長クラスや本部の部次長クラスでは年次年功による昇給ではなく、現在の職務への対価と単年度の成果を賞与で報いる形にしました。自らスキルを向上し、みずほにとって付加価値の高い仕事を担う職務に就ければ処遇も上がる仕組みです。職務に対して期待成果が上がれば賞与で還元し、社員への成長機会をしっかり作ることになります。

――「ジョブ型」のようなものでしょうか。

江原:ジョブ型とは別と考えています。みずほの全ての社員に経営の考え方を伝えるため、評価・処遇は「職務と成果」に基づくものとして、「社員の評価のあり方、社員の努力への報い方を変えていく」とシンプルに説明しています。

 2020年10月に職務等級を変えました。職務サイズに応じて、一定の柔軟性を持たせて等級の上げ下げをし、きめ細かに等級設定ができる制度です。2021年度からは、「専門性を軸とした社員のキャリア形成」を進めていきます。全部で約80の職務ごとに必要とされる要件をビジネスサイドから定義する「専門性記述書」を作成する作業が最終段階に来ています。

 専門性というと、ゼネラリストに対するスペシャリストと思われがちですが、みずほにおいては少し異なり、「専門性とは、日々の仕事の中で一人ひとりが身に付けるナレッジ、スキル、コンピテンシーである」と考えています。80職務の要件定義が出来上がったら、今年4月からは専門性に基づく評価体系に切り替えていきます。

 今回の5カ年経営計画でキーワードにしているのが、「社員の熱意と専門性」です。日々の努力の中で専門性を身につけ、熱意を持って研さんしていく社員は自身の価値を高めることができる。成果が上がれば、社員の熱意がさらに高まり、それによってみずほグループの企業価値が向上するというサイクルを作っていきたいと思います。

 若い世代には、早い段階で自分の職務を積極的に選び、覚悟を決めて取り組んでもらおうと思っています。当社には様々な業務があり、それぞれの仕事にやりがいや誇りを持ち、お客さまや仕事を共にする仲間に貢献することを喜びにしてほしい。会社としても評価者教育などを通じて評価者の在り方を変えながら、社員の希望と意向をきちんとくみ取っていくことに努めます。

 評価というと人事評価、昇格評価など「査定」のイメージがありますが、評価は査定だけではないと考えています。その人に本当にふさわしい仕事とは何かを上司が考え、部下と一緒に悩むことが真の評価なのではないでしょうか。

 今の仕事で成果が上がらない社員には、何度もコミュニケーションをとりながら本人に向く仕事を見つけ、新しい仕事で成果が出るように支援します。職業人としてプロ意識と誇りを持って力を発揮してもらい、会社が報いる形にしていくべきです。