ジョブ型を導入し、社内公募でキャリア自律を推進

中田:今回の制度刷新の背景には、少子高齢化や労働力人口減少などで、世の中も社員の価値観も大きく変わってきたことが挙げられます。会社としてもイノベーションを発揮していかないと国際競争に勝っていけません。こうした社会の変化が経営戦略の根幹となり、人事制度改革につながりました。これからは社員一人ひとりが自分のキャリアを主体的に考え、オーナーシップを持って業務をやり抜くことが必要とされ、これによって会社の生産性も上がっていくことが求められます。

 こうして「pay for job, pay for performance」を原則とした新人事制度の議論を2018年から始め、2020年7月に1 on1を導入し、公募制度を10月にスタート、労使交渉を経て今年の4月から本格稼働となります。

――新人事制度について具体的に教えてください。

中田:まず、管理職約5000人についてジョブディスクリプション(職務記述書)を作り、定義した職務への成果で処遇する形にしました。管理職社員一人ひとりのポジションを「専門知識」「事業の知見」「リーダーシップ」など7つの観点から評価し、グレーディングしています。2021年4月からは、一般社員約1万2000人にも同様の制度を適用します。人事異動は原則として社内公募制とし、昨年10月に公募を開始しました。

 管理職社員・一般社員ともに「職務等級制度」と呼んでいます。一般社員はジョブディスクリプションを作成せず役割グレードから落とし込む点が、管理職と逆のアプローチになっています。

――公募制度の導入で苦労した点はありますか。

中田:当初は現場から「イメージが湧かず、不安」という声もありました。従来、社員のローテーションは上司が主導権を持って育成計画を進めていたので、「公募制にすることで、ある部署で突然人が足りなくなった場合はどうするのか」という質問も相次ぎました。これについては役員や現場と議論を重ね、「人材育成計画は引き続きしっかり行うが、会社による決定ではなく本人の意向を重視する」という運用を徹底していきます。

 例えば、これまで上司が本人の育成プランをしっかり考慮して昇格や異動を予定していても、コミュニケーション不足で本人に意図が伝わっていないこともありました。そこで、上司と部下が日頃から今後のキャリアプランや家庭事情をよく話し合ったうえで、本人による積極的な手挙げを促すようにしています。

 この結果、昨年10月の公募スタート後には、2019年の約2倍の応募がありました。まだポスト全部の募集と応募が完全にマッチしているわけではありませんが、10月の公募を受けて今年1月に異動が決まった人もいるので、今後は応募数もマッチング数も増えていくと考えています。公募対象は、昨年10月から今年3月までは総合職まで、今年4月からは製造を担うオペレーターも対象にし、10月からは管理職の職位者と対象を広げていきます。

 管理職の異動は本人の同意がなくても発生しますが、一般社員については転勤を伴う異動は本人の意向を聞かずに行うことはありません。

 

――ジョブ型を製造現場にも適用しているのですか。

中田:製造現場は役割等級になります。「この職務等級の人にはこういうことが求められる」と緩やかにしてありますが、ここでも「職務を達成できたかどうか」という成果は求めますので、評価方法自体はほかと同様です。