メンバーの行動変容によってCXを推進

西田:メンバーへのKindnessとは、具体的には個々のメンバーが自らを解放し、自らの意思をもって自らの頭で考えること、また多様な仲間と交わることで自律や内発的動機付けがされて、創発を起こしていくことにつながります。

 カインズでは「PROJECT KINDNESS」を実現し、CXをステージアップする価値観として、2020年に新たに3つのコアバリューを策定しました。それが「Kindnessでつながる」「創るをつくる」「枠をこえる」です。

 1つ目は当社の強みであり信頼の証しである「Kindness:親切心」を大事にすること、2つ目は率先して新たなことにチャレンジし、自らがキャリアパスをつくりあげていくこと、3つ目は常識を超えて自由な発想をし、多様な環境の中でイノベーションを起こしていくことを表しています。この3つのコアバリューをベースにメンバーの行動変容を支えていくのが、今回の新人事戦略「DIY HR」のポイントです。

 「DIY HR」を推進することでCXを実現し、デジタル化時代の小売業をリードするという会社目標と個人の自己実現目標のベクトルを合わせ、組織のパフォーマンスを最大化することで、社会的貢献と社員幸福度向上の両方を追求することを狙っています。

 ただ冒頭でお話ししたように、これまで当社が踏襲してきたのは、高度な合理性を求めて中央集権化する経営スタイルでした。「DIY HR」の新しいコンセプトは、メンバーによってはカルチャーショックになるかもしれません。今後の実行フェーズでは社内の風土改革や意識改革が求められ、そのためにもコミュニケーションを活性化する必要があります。この時期、改革をメンバーに説明する全社イベントを行うのは難しいですが、音声メディアなどを駆使して折に触れて説明をしていこうと思っています。

店舗のメンバーと一緒に(写真提供:カインズ)
店舗のメンバーと一緒に(写真提供:カインズ)

──人事制度も変わりますか。

西田:「DIY Career Path」で明記したように、キャリアの複線化に向けた制度変更を行います。当社はこれまで、店舗への配転で経験を積み店長になるのが一般的なキャリアパスでした。このため、店長になるための人材育成が主だったのです。しかし事業がここまで拡大すると、本部も含め様々な部門でのキャリアの可能性を担保する必要があります。

 もし店長を目指すなら、様々な部署を体験していたほうがよく、ローテーションを採用したほうがうまくいきます。しかし店長になりたいメンバーばかりではなく財務や法務の専門家やエンジニアもいますから、キャリアを複線化して対応していきます。

 人事戦略の方向性はジョブ型に近いですが、あえてジョブ型といわずカインズらしい人事制度をつくろうと考えています。例えば異動について、従来は本部主導でしたが今後は本人の意思も確認し、公募制を導入してメンバーの自己実現ができる形にしていきます。