エンゲージメント向上が企業の成長につながる

──最高人事責任者としてあるべき姿について、西田さんのお考えをお聞かせください。

西田:これまで以上に大事になってきたのは、いかに個に寄り添うかということだと感じています。人事担当者として注力すべきことは3つあります。

 1つ目は、コミュニケーション量を増やすこと。コロナ禍で物理的なコミュニケーションが取りづらいので、雑談を含めてとにかく話をする機会を増やすことです。2つ目はメンバーに情報が遮断されないように、絶えず経営側から発信をすること。私は人事部内では、イントラネットで毎日情報発信していますが、内容は硬軟とりまぜるようにしています。3つ目に大事なのは理念の浸透です。コロナで分断された社会の中で、「なぜこの会社で働いているのか」という企業理念を、経営トップからメンバーまで共通して持つことが大事で、その理念浸透を支援するのが人事の最大の役割です。

 CHROとしては、とにかく人に会うことが重要だと考えています。カインズに来てから早々に全国の店舗の巡回を始めており、店長、新入社員、アルバイトなどの区別なくあらゆる層のメンバーと対話することを心掛けています。そこで聞いた話を社内で共有し、課題解決に生かしています。

──西田さんは読書家ですし、読んだ本の内容を発信するなど情報のインプットとアウトプットを常に心掛けておられます。

西田:前職のライフネット生命保険を創業した出口治明さん(現立命館アジア太平洋大学学長)が、人生に必要なものに「人・本・旅」を挙げています。コロナ禍で、人と会ったり旅に出たりするのは難しくなりましたが、本ならいつでも読めます。自分たちが「井の中の蛙」にならないために、読書は大事です。また、読んだらその内容を発信しないと自分のものにならないと思っています。

 カインズの本社4階にも図書室がありますが、最新刊がそろっているわけではないんですよ。そこで、自席の近くに「西田文庫」を作りました。自宅から段ボール3箱分の新刊書籍を持ってきて所蔵しています。人事メンバーには「自由に読んでいいよ」と。ビジネス書ばかりでは面白くないので、時代小説、アート、心理学、哲学など様々な分野の本を収蔵しています。一種のリベラルアーツですね。

個人蔵書で「西田文庫」を設置(写真提供:カインズ)
個人蔵書で「西田文庫」を設置(写真提供:カインズ)

──リベラルアーツといえば、社員研修なども新しい形に変えたりしていますか。

西田:従来の階層的な研修から横断的な研修に変え、メンバーが学びたいものをカフェテリア的に選べるようにしていきます。

 先日は早稲田ビジネススクールの協力を得て、異業種の企業を招いて半年間のイノベーション研修を行いました。新規ビジネス案を発表し、審査のうえ表彰するものです。また当社には役員候補を対象にした社長直轄の「高家塾」がありますが、今後はこれらを含むリーダー育成研修を体系化させて「CAINZアカデミア」として運営していきます。

──人事の新コンセプト「DIY HR」で期待する成果は何ですか。

西田:メンバーのエンゲージメントが目に見える形で上がることです。自己実現や成長などすべてがうまくいかないとエンゲージメントは向上しませんし、これが向上することが究極的には会社の生産性を上げ成長につながります。

 ですから、人事戦略で最も重要なのはエンゲージメントを高めることだと考えています。「DIY HR」でメンバーのエンゲージメントが向上し、社内外から評価されることが当面の目標です。私の生き方の軸の一つに「言霊」があります。言葉は声にした瞬間に魂が宿るので、「DIY HR」という言葉にした以上、必ず成果を上げようと思っています。