ジョブ型を全社員13万人に適用し、単身赴任の廃止など大胆な働き方改革を推進する富士通。「IT企業からDX企業への転換」を図る中、社員にクリエイティビティを発揮させ、組織のエンゲージメントを高めることを重視する。改革はどこまで進み、どんな手ごたえを感じているのか。平松浩樹執行役員EVP CHRO(最高人事責任者)に聞く(写真:稲垣純也)。

――2020年4月にジョブ型を、同年7月には新たな働き方「Work Life Shift(WLS)」を導入し、「人」にかかわる変革を次々と実行しています。経営戦略と人事戦略をどのように連動されていますか。

平松浩樹氏(以下、平松):2019年9月に発表した経営方針で「IT企業からDX企業への転換」を掲げました。その変革の中心が人材です。社員に対しては「人材こそが最大の経営資源でありお客様価値創出の源」と常日頃から呼びかけており、人的資本経営の実践を強く意識しています。DX企業としてお客様と一緒に社会課題の解決を考えていくうえでは、社員のスキルやエンゲージメントを高めていくことが欠かせません。

平松浩樹氏 富士通執行役員EVP CHRO
[画像のクリックで拡大表示]
平松浩樹氏 富士通執行役員EVP CHRO
1989年関西学院大学 社会学部卒業後、富士通入社。プロダクト事業推進本部勤労部担当部長、ビジネスマネジメント本部セールス&マーケティング人事部長などを経て、2019年理事に就任し、グローバルコーポレート部門人事本部長を務める。2020年執行役員常務総務・人事本部長兼健康推進本部担当、2021年執行役員常務CHRO。2022年4月から現職(EVPはエグゼクティブバイスプレジデントの略、常務に相当)

ビジネスと人事を一体化、採用・配置権限を現場に

――人的資本経営を強化するために、人事の体制も変えましたか。

平松:富士通は財務指標に加え、3つの非財務指標の達成を対外的にコミットしています。その1つが、社員のマインドセットや組織のカルチャーへの共感を示す「従業員エンゲージメント」です。富士通がビジネスを変えていくにあたっては、社員一人ひとりのマインド、ビヘイビア、スキルがすべて変わらなければならない。ビジネスと人事を一体化させ、ビジネスの議論をするときには、今の組織や人材では目指す姿に対してどの程度のギャップがあるのかも議論しなくてはいけません。

 そこで私がCHROに就任し、管理職をジョブ型に移行した2020年春に、人材配置権限をビジネスサイドに委譲しました。ビジネスユニットごとの短・中期の戦略に合わせ、どんな人材が必要か、どう採用するかを事業責任者が意思決定します。つい2~3年前までは人事部門が新卒・中途採用人数を決め、各事業部門に配分していましたが、人事の体制も変えて、各本部のトップの近くにHRBP(HRビジネスパートナー)を置き、ビジネス戦略にあわせた人事施策を本部長と一緒に考え、実行する体制にしました。各本部のHRBPは、マネージャーと、担当者がそれぞれ1人という目安です。2022年の採用実績は、富士通本体で新卒750人に対して中途3~400人ですが、中途採用の人数は300人以上とし、上限は決めていません。