「IT企業からDX(デジタルトランスフォーメーション)企業へ」を旗印に、2019年から社内改革に取り組んできた富士通。2020年からはジョブ型人事制度の導入、テレワークを基盤とした新しい働き方推進など、社内の制度と文化を大きく変革する施策を次々に打ち出した。経営トップとタッグを組み人事改革を推進する、執行役員常務総務・人事本部長の平松浩樹氏に話を聞いた。
──2020年4月から人材育成方針を大幅に見直し、ジョブ型人事制度も導入しました。きっかけと施策をお聞かせください。
平松浩樹氏(以下、平松):きっかけは2019年6月、時田隆仁が社長に就任した際「当社はIT企業からDX企業に変わる」という強いメッセージを社内外に発信したことです。この時、時田と今後の組織の在り方や人事の取り組みについてじっくり話しました。「社員がモチベーション高く誇りを持って働き、外部の優秀な人材が働きたいと思える魅力的な会社にしたい」と言われ、共感しました。
「DX企業としての富士通というフィールドで、最適な場所に最適な人がアサインされ、イノベーションがどんどん起こる会社にするには、今の人事の仕組みをどう変えるべきか」と時田に問われ、「大きな改革として、ジョブ型人事制度を早急に導入したい」と答えたのです。トップのコミットメントがあると、人事としての施策の提案がこんなにもしやすいのかとありがたく思いました。

平松:既に、日本型人事制度には弊害が出ていました。日本と海外の制度が違うためにグローバルなプロジェクトの編成や人のアサインなどにおいてスピードダウンが起きていました。ジョブ型人事制度にしない限り、グローバルにビジネスができる会社にならないと考えたのです。時田も社長就任前に英国に駐在し、現地で人材マネジメントや人事制度などについて日本との違いを痛感していたので、全く同じ考えでした。
実は2013年にジョブ型導入にトライして、うまくいかなかったことがありました。上級幹部以上に職責グレードと格づけをグローバル共通基準で作ったのですが、マネジャー全体に格づけを広げ、これに基づいた報酬制度に転換しようとした時、「今そこまでやる必要があるのか」という声が社内で上がり、先に進めなかったのです。
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