大人の発達障害の場合は、両方の特性を持つ場合が多く、また、その程度も一人ひとり違います。それぞれの特性については前回掲載の記事にもう少し詳しく紹介しています(記事はこちら)

 改めてお伝えしておきたいのは、発達障害は決して本人の努力不足や人格などに起因するものではないということです。人口に対して一定の割合で存在するとされ、「得意・不得意なことがある」点では、程度の差こそあれ、私たちと変わりはありません。

 一方で、得意なことや優れた能力が突出するというのも特徴です。人によって違いますが、例えば、何か特定のことに「こだわる」と、強い集中力を維持しながら長時間向き合い続けられるので優れた結果が出ることもあります。

 これまで、モーツァルトやアインシュタインのほか、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズなどグローバル企業の創業者である彼らにも発達障害の傾向があったことが知られています。

 私の身近なところでは、医者や弁護士にも発達障害者やその傾向を持つ人は多く、優秀で能力が高い人も多いと思います。得意な能力を生かした活躍が期待できる、会社の大きな戦力となる可能性を持った社員ともいえるでしょう。

 では、うつの症状で休職した社員に「大人の発達障害」がある場合、復職しても職場でトラブルとなりやすいというのは、どういうことなのか、どう対応したらいいのか。

 このテーマについて、発達障害者の就労支援を専門とする大妻女子大学人間関係学部人間福祉学科教授であり、また厚生労働省指定のジョブコーチ養成研修機関「NPO法人ジョブコーチ・ネットワーク」の理事長でもある小川 浩先生にお話を伺いました。

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五十嵐Dr.:私は2005年から、うつ病で休職した会社員の復職を支援するリワークプログラムを医療機関で行っていますが、2010年頃から発達障害の傾向をもった人が多いと感じるようになりました。

 彼らはリワークプログラムの集団療法で、発達障害について学び、自分の障害特性を理解して受容していきます。

 しかし復職する時に「自分は発達障害です」と、会社に伝えられるかどうか。実は、伝えない人も多いのです。会社が発達障害について理解してくれている、受け入れてくれていると言いやすい。会社が受容してくれるかどうか。ここが大事なところです。

 自分の障害を知られてしまうことに不安や抵抗がある。けれども、心身への影響を考えれば、職場の上司や仲間にオープンにして、適切な配慮があった方が本人も働きやすいのです。

 企業の人事労務の方にも、発達障害の障害特性を理解してもらって、「どうやって障害を抱えた社員にうまく仕事をしてもらうか」という視点を持っていただきたいと考えています。

 そうすれば、適切な対応や配置もできるでしょう。そういう取り組みが、発達障害のうつ休職者や退職者を減らす、大事な方策だと考えています。