職場の「無理解」からトラブル多発

小川教授:会社は従業員を雇用した以上、「給料分は働いてもらわないと困る」と考えています。ですから、会社が「発達障害だから仕方ない」とあきらめるのではなく「会社がどのような工夫をすると働きやすいですか?」と問いかけていけば、発達障害の本人も疎外感を感じることなく働き続けるモチベーションが出てきます。

 会社は受け入れて、工夫していく。それで社員も、前を向く。働くということは、そういうことなのではないかと思います。

 逆に会社が、「簡単な仕事しかさせない」というような配慮をするのでは、本人の自己肯定感が低くなり、心身の調子を崩すことになりかねません。

 ただし、職場の管理職は、他の従業員との関係性を気にします。クレームが出るのでは特別な対応をすることは難しい。少なくとも「発達障害である」という医師の診断があって、それをきちんと会社に伝え、他の従業員にその後の対応について説明することも重要です。

大妻女子大学 人間関係学部 人間福祉学科教授
ジョブコーチ養成機関 ジョブコーチ・ネットワーク理事長
小川 浩(おがわ・ひろし)氏
専門は障害者福祉及び障害者就労支援。特にジョブコーチ、発達障害者の就労支援が最近の主要な研究テーマ。1984年筑波大学大学院教育研究科修了、神奈川県総合リハビリテーションセンター、社会福祉法人横浜やまびこの里で知的障害者、自閉症者などの就労支援を経験し、2003年より大妻女子大学で教鞭を取る。現在、人間関係学部人間福祉学科教授、共生社会文化研究所所長、NPO法人ジョブコーチ・ネットワーク理事長。日本職業リハビリテーション学会副会長

五十嵐Dr.:一方で、職場の皆さんが「発達障害」の特性を知らない、理解がないために起きているトラブルが少なくないようです。

小川教授:そのトラブルは非常に多いです。例えば、「プロジェクトの進行予定表を作るように指示したら、いつまで経っても出てこない」というクレームがあります。自閉症スペクトラム障害(ASD)の場合、仕事の段取りを考えたり、先々の予定を立てるのが苦手です。大勢の人が関わるプロジェクトの進行予定表を作るのは至難の業です。とても難しい。

 また、「急ぎの資料作成を頼んだのに、妙なところにこだわって、客先への提出に間に合わなかった」というケースもあります。これもASDであれば、特定のことに強烈にこだわって他のことが見えなくなる特性があるからです。

 この場合は、「○時までに作ってほしい」など日時を具体的に伝えたり、途中で進捗状況を確認していけばトラブルを未然に防ぐことができます。