日経BPは、2020年7月14・15日の両日に「CHO Summit 2020 Summer~人と組織の変革に挑む」(主催・日経BP 総合研究所、協力・Human Capital Online)を開催した。コロナ禍の今回は、オンラインでライブ映像を配信する形式のセミナーとなった。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて「ニューノーマル(新常態)」に向けた企業経営が必須となった現在、人材マネジメントではどのような戦略が求められるか――。人材マネジメントの先進企業のトップや最高人事責任者(CHO/CHRO)、有識者が次世代の人材戦略や具体的な取り組みを披露した。その中から、弁護士の國廣正氏が登壇した基調講演を振り返る。

 「コンプライアンス」という英単語は一般的に「法令順守」と訳されている。しかし、これまで数多くの企業不祥事に対応してきた國廣正氏は「法令順守からのアプローチでは有効なリスク管理はできない」と警鐘を鳴らす。法令に違反していなくても社会から糾弾されるケースも少なくないからだ。同氏は「ステークホルダー(利害関係者)や市場からの目線でリスクを考えることが大切だ」と強調する。

国広総合法律事務所 弁護士 國廣 正 氏(撮影=棚橋 亮)

レピュテーション・リスクが新たな課題に

 コンプライアンスの新たな潮流として國廣氏が最初に掲げたキーワードが「レピュテーション・リスク」である。これは「企業の行為やそれに言及する情報をもとに与えられる、あらゆるステークホルダーによる評価の集積」と定義されるリスク。ひらたく言えば「ステークホルダーによる評価が低下して企業価値が毀損するリスク」のことだ。

 このリスクが現実化する、すなわち企業ブランドが毀損すると株価が下がり、顧客が離れ、有望な新人が入らなくなるといった事態を招くことになる。同氏は「法令に違反して何千万円の罰金を支払っても経営が破綻することはないかもしれないが、レピュテーション・リスクが現実化すれば経営危機を招く恐れもある」と指摘する。

 次に掲げたキーワードが「フォワードルッキング」だ。國廣氏は、これを「後ろ向きのアリバイ的モグラ叩きのコンプライアンス」ではない「将来のリスクを想定する創造性のあるコンプライアンス」だと説明する。一言で表現すると「社会規範の変化を敏感に捉えるアンテナを備えること」である。同氏は「LGBTが象徴しているように社会規範は時代とともに拡大していくので、この変化をいち早く捉えることが大切だ」と指摘する