原理原則に基づいて場面ごとに判断する

 3番目に掲げたキーワードが「ルールベースとプリンシプルベース」である。ルールベースとは、詳細なルールで「できること」と「できないこと」を明確に定めて規制される側の予測可能性を確保するという考え方。プリンシプルベースとは、原理原則(プリンシプル)を明確に示すが、細かいルールまでは定めず、どのように行動するかは現場の判断に任せるという考え方のことだ。

 ルールベースの場合は、ルール上で禁じられていないことは「やってもよい」と解釈される可能性がある。ルールを定めた当時には社会的に受け入れられていた行動でも、社会規範が変われば糾弾される恐れがあるのだ。一方のプリンシプルベースでは、ルールとしては決められていなくても、場面ごとに原理原則に基づいて判断するので違法行為や脱法行為、社会的に糾弾されるような行動に結びつく可能性は低くなる。

 ただし、プリンシプルベースのコンプライアンス体制を築こうとして誤った対応をする企業も少なくないという。プリンシプルを詳細に定義するためにチェックリストを作成した企業もあるそうだ。また、人事などの他部門から切り離してコンプライアンス担当を決めて丸投げするような対応も誤りだと指摘する。

 國廣氏は「プリンシプルベースの体制を築く際には、明確な答はないことを出発点に考えるべきです」と語る。人事や法務など特定の部門だけの取り組みではなく、現場の従業員が意識することが極めて重要だという。同氏は「自分の行動に少しでも後ろ暗い気持ちがあった場合に『これって大丈夫ですか』と上司や同僚と対話するような人材が求められるし、こうした人材を高く評価するような人事制度も必要」だと語る。

 この後に國廣氏は、プリンシプルベースのコンプライアンスにおいて基礎となる「インテグリティ」という考え方の詳細や、「人と組織の変革」の問題を「ものがたり」という観点から考えることの重要性などを解説した上で、視聴者からの質問に回答して講演を締めくくった。