日本的雇用慣行の「終わりの始まり」を迎えつつある今、社員一人ひとりのキャリア意識の転換が急務となっている。自らのキャリアを主体的にとらえ、成長していくための仕組みや実践とはどのようなものなのか。「VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)」の時代とグローバル化を念頭においた次世代リーダー育成と、組織エンゲージメント向上に対して先進的な取り組みを実践している3社で人事を担当するリーダーが、それぞれの取り組みを披露するとともに次世代リーダーの育て方を議論した。
次世代経営リーダーのコンピテンシーモデルを策定
モデレーターの原田かおりが「コロナ禍で多くの企業が、リモートワークをはじめとして新しい働き方を模索しているが、経営や人事から従業員に対して、どのようメッセージを発しているのか」と問うと、AGCで人事部長を務めている簾孝志氏は「リモートワークのような環境では自律性と多様性が重要であることを伝えている」と答えた。

グローバルで約5万5600人が働いている同社グループでは、従業員の自律性を象徴するような取り組みが既に始まっているという。「CNA(Cross-divisional Network Activity)活動」と名付けている取り組みだ。これは、専門性とスキルを軸に組織横断でメンバーが集い、スキルごとに活動方針・内容を企画・運営する活動。単独スキルの活動から複数スキル、さらには他社とのコラボレーションへ発展しつつあるという。簾氏は「部門・国・地域を超えたCNA活動がAGCグループの文化として根付きつつある」と語る。
同社は各部門・各地域で人材を選抜・育成するとともに、その中からグローバル規模の「次世代経営人財候補」を見いだして次世代の経営リーダーを育成中だ。このためにグループ経営を担う人材に求められる能力・資質を明確化した「AGCリーダーシップコンピテンシーモデル」を策定。8つのコンピテンシーの下に合計43の具体的行動を定義している。