青木氏は「企業価値は経済価値と社会価値の好循環の中から生まれる」として「寄付などで社会貢献している企業も多いが、事業から離れた活動だけでは社会価値を継続的に高めることは難しい」と指摘する。

 モデレーターの酒井耕一が「社会価値創造のために、どのようなことに取り組んでいるのか」と問うと、青木氏は「この取り組みで難しいところは一つの部署で完結しないところだ」と答える。この課題を解消するために同社では、従来はCSRやサステナビリティ戦略など複数の部署に分散していた機能や人材を統合して、2020年1月に「ソーシャルバリュークリエイション」という専門組織を設置。この組織が、長期的かつ全社的な視点で社会価値の向上のためには、どのような取り組みが必要なのかを検討している。ブランドや工場、調達などの各部門と共同でKPI(重要業績評価指標)を設定し、取り組みの進捗を管理しているという。

 一連の取り組みは、サステナビリティに関する最高意思決定機関「サステナビリティ コミッティ」から評価と助言を受ける。ここには、環境に関するNPO法人など外部の専門家も含まれている。

個の自己実現欲求と企業理念の方向性を一致させる

 ライフネット生命保険の副社長と最高人事責任者(CHRO)を兼務する西田政之氏が、前職のマーサージャパンから転じてきたのは2015年のこと。ライフネット生命保険の業績が落ち込んでいた時期だ。同社は、ここからの5年間でV字回復を果たす。酒井が「業績回復に向けて、どんなことに取り組んだのか」と聞くと、西田氏は「個の成長と挑戦を促すことだけ」だと答えた。インターネット上の契約を主軸としている同社は、ほかの生保会社とは異なって不動産や営業部隊を有していない。「資産といえるものは、経営理念に共感してくれた、志を同じくする従業員とステークホルダー(利害関係者)だけ」(西田氏)なので、人材の育成が競争力の向上に直結するのだ。

ライフネット生命保険 取締役副社長兼最高人事責任者(CHRO) 西田 政之 氏(撮影=棚橋 亮)