「人件費削減として採用凍結、人員を補充しない、リストラするという方向に舵を切るのは簡単だ。ただし、コロナ禍の今は人事責任者としてやるべきことは違うのではないか。人材への投資が必要不可欠だと言い続けなければならない。コロナ禍で伸ばせるビジネスにあわせた人材を採用したり、社内の人材を配置したりしなくてはいけない。社内を納得させるための材料と覚悟と情熱がなければ難しいが、これこそがCHOとして腕の見せどころだろう」。前職でかつて人員整理などのコスト削減を経験した、サトーホールディングス グローバル人財開発室長の江上茂樹氏はこう話す。

 生き残りをかけて新たな人材ポートフォリオを追求し、高い専門性を備えた人材を育成することが企業競争力の源泉となり、企業の資産となっていく。

 ただし「人材育成」のやり方も今後は変わってくる。キャリア自律を前提とした組織では部門ローテーションによるOJT型の育成や年次研修などはもちろん、リーダーシップ研修なども含めて「本人が特に望まないのに会社が一方的に与える人材育成策」はすべて不要になる。代わりに必要となるのが、社員一人ひとりが志向するキャリアに応じて、異動や業務のアサインを柔軟に行うことだ。

 例えば、SOMPOグループの戦略的IT企業として位置づけられるSOMPOシステムズでは、2017年に約1700人のIT人材育成を目的に一人ひとりのITスキルを測り、認定する「スペシャリティ認定制度」を導入した。この認定の有無は異動や昇格、報酬にも連動している。「キャリアを獲得するために認定という手段を提供し、その認定のために自ら異動を希望する、自ら認定に必要な資格を取りに行く」という、従業員の意識改革が急速に進みつつある。また認定は更新制のため、必然的に本人が学び続ける仕掛けにもなっている(記事はこちら)。

 こうした、社員のキャリア志向や評価、異動履歴、研修といった多くの要素を一元管理するには、タレントマネジメントシステムなどのIT活用も有効だろう。

 会社の名前がなくとも、自分でキャリアを切り開いていける人材を育成していく環境、仕組み、制度を作っていくことが人事のミッションになる。従業員一人ひとりがキャリアを棚卸することで生き方も変わっていくのではないか。コロナ禍で従来の人事制度は通用しなくなる。ジョブ型雇用をきっかけにした未来の人事制度をどう創造していくか、今まさにその過渡期にある。

(原田かおり=日経BP 総合研究所 HR事業部 ヒューマンキャピタルOnline編集長)

後世、この2020年が日本企業における働き方改革の転換点になったといわれるでしょう。「with/afterコロナにおいて、元には戻れない」――テレワーク浸透によって人材育成のあり方、雇用制度の見直し、オフィスの存在意義など、コロナ禍の企業経営では人材戦略の実効性がますます注目されています。

日経BP総合研究所では、7/14(火)15(水)の2日間で「CHO summit 2020 Summer~人と組織の変革に挑む」を開催します。本サミットでは、企業トップや有識者の講演に加え、経営に資する人材戦略に責任とスピード感を持って施策を打っていくCHO/CHROが登壇するパネルディスカッションを実施。次世代リーダー育成、コロナ禍で変える働き方、ESG経営における人的資本、人事部門の新しい役割であるHRBPなど、最新のテーマにおける課題と解決策を議論します。本記事で取材したサトーホールディングス グローバル人財開発室長の江上茂樹氏も登壇します。オンラインのライブ配信で実施し、講演とパネルディスカッションでは視聴者の方からの質疑応答も予定しています。