須東:具体的な見極め方というのはありますか。

有沢:一般的に変えるべきものは、評価や処遇、そしてあるべき人材ですね。なぜなら企業が目指すべき方向性は一つだったとしても、そこに向かう戦略の中であるべき人材は常に変わるはずだからです。同じ人材を求め続けていると基本的に企業は弱くなると思っています。一つ例を挙げますと、私がカゴメに入った当初、カゴメの新卒採用は「カゴメっぽい人」を採ることでした。カゴメっぽいというのは、誠実で、優しくて、素直で……と、でも僕は採用すべきはその逆だと思ったんです。なぜかというと、いろんな人がいる中での衝突からいろんなものが生まれる。価値観の違ったいろんな人がいることを認め合うことがダイバーシティですから。僕が入って、3年目に新卒採用をガラリと変えました。すると、最初は「カゴメっぽくない人が入ってきた」と、社内がざわつきました。今は「カゴメっぽくない人を採ってくれ」と言われます。もはや「カゴメっぽい」が何だったのか、分からなくなってしまいましたが、それこそがダイバーシティ。一方で、カゴメが持っている本来の文化、お客様の信頼は変えてはいけない。変えるべきものと変えてはいけないものの、この2つをどうやって見極めるか。これがものすごく重要だと思います。

経営理念や価値観の浸透をどう促すか

須東:海外で駐在する人たちの目的を調べてみると、日本の場合は管理・監督のために行くというのが第1位なんです。一方で、世界のグローバル企業のエキスパートたちは、部長以上への経営理念の浸透を促すために駐在しているという差があります。

有沢:当社はグローバル企業には程遠いのですが、心がけていることとしては、とにかく現地に出向くことです。当社には国際事業本部があります。この部署は、基本的に現地のCEOの人事権は持っていません。あえて取り上げたという方が正しい。現地のCEOの任命権は社長と私で持つようにしたのです。すると、何が起きたか。私が行くと現地のCEOは、一生懸命に現状を説明するわけです。こちらも、今何を困っているのかを一生懸命に聞く。そして解決のために関係するところへつなぎます。現地の人に寄り添い、「問題や課題を有沢に伝えれば解決の方向性が見えてくる」と、思ってもらうことが大事なんです。

中島:私たちの会社はグローバル化が日本企業には珍しいくらいまで進んでいて、いわゆるグローカル化している状態です。駐在員を使って日本で管理していくのではなく、それぞれの地域でビジネスを自律的にやっていて、その集大成としてグループ経営を行っています。その中でどうやって会社の価値観を浸透させていくかというのは、日々頭を悩ませているところです。高いところから流し込むような感じで、価値観を下ろしていくのではうまくいきません。今、私がやろうとしているのは、価値観のエバンジェリスト(伝道者)ですね。価値観とは答えがあるものではなくて、その価値観について語ることによって徐々に浸透していくものですから、語り部のような役割をしていくのが、価値観を浸透させるリーダーであるCHROの役割だと思っています。