――では、社員一人ひとりが役割や使命を決めていくのですね。

小山:はい。役割を割り当てるのではなく自分で役割を設定する人事プログラムを設計し、導入しました。役割(ジョブトラック)はPioneer、Advancer、Guardianの3つで、自分が所属する部門の事業計画を見て、何をやりたいかが選べるようになっています(図1参照)。半期ごとに上司と本人の1 on 1で相談し、どの役割を担うかを明確にします。事業全体は図のような4象限に集約されます。例えば、象限の左上と右下は既存顧客に対応したり、既存技術を提供する事業なので、それを広げていく役割がAdvancerであり、既存のビジネスをしっかり堅牢にしていく役割がGuardianです。

(図1)すべての部門・職種において社員が自分で役割を選択する(出所:セゾン情報システムズ)
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――例えば既存の事業を担当している社員が、最初はGuardianでも、時間が経つとAdvancerになることもあり得るということですか。

小山:その通りです。左下の「既存の取引先&既存の技術」ばかりでは企業の成長はありません。グループのSIベンダーという立ち位置から脱却して事業を開拓していくためには、こうした考え方を導入して役割を明確にする必要があったのです。社員も自分で役割を決めるため、「この役割を全うするために自分に足りないものはこれだ」と意識し、自発的に学ぶようになります。

 2017年4月にこのプログラムを始動した時は社員はあっけにとられていましたが、今ではすっかり定着し「自分はAdvancerで今は右下」などと言うだけで、一瞬にして社員がお互いの立ち位置を理解できるようになっています。

「モード2」の人材育成へ

――自分で役割を選ぶことによって、責任を持って学ぶモチベーションを上がるのではないでしょうか。今はどのような事業、どのような人材の育成を目指していますか。

小山:当社の事業を大きく分けると、より削減や効率化を目指す「モード1」の事業と、付加価値を生み出す「モード2」の事業があり、モード1は守り、モード2は攻めに相当します。2014年の事業割合はモード1が96%、モード2がわずか4%でした。モード1にしか対応できない人材では新しい事業や展開は望めません。そこで、モード1、モード2のどちらにも対応できる「バイモーダル組織」を目指し、バイモーダルな人材育成に力を入れるようになりました。

 というのも、時代のニーズは要件定義から始まる受託型のシステム開発から、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」へ移りつつあります。1人でアイデア出しから開発まで担当して素早く形にするスピード感を持った「モード2」の力を併せ持った人材を育てていきたいと考えています。

――そのためにどんな育成や研修を行っているのでしょうか。

小山:最初に変えたのは、入り口にあたる新卒採用です。従来はコミュニケーション能力の高い文系の学生を採用していましたが、モード2では技術力なしには通用しません。そこで2017年度からは技術を学んできた理工学部や高等専門学校卒の人材を採用しています。同時に研修方法も大きく変えました。3カ月間の研修の前半1.5カ月は会社や業界についての研修や基本技術を学び、後半1.5カ月ではアジャイル開発を学びます。