とりわけ、創造性と質の高さの両方を求められる「企画・アイデア」に分類される会議は、目的を達成する難易度が高いので進め方のコツがあります。この象限の会議(場)こそ、ファシリテーションが効果を発揮するところなのです。

 先に述べた人事主管のエンゲージメントの調査結果を踏まえた職場改善会議も、望ましい職場の未来に向けて、質の高い変化を創造するという点においては、この象限に該当します。さらに、会議の名称を「職場改善会議」と呼ぶのではなく「理想の職場、創造ワークショップ」といったようにリフレーミングし、定期的な現場運用に乗るまでは、人事がファシリテーターとして、各部門の会議に赴き、ニュートラルな立場でサーベイ結果を踏まえて、職場の現状を参加者全員でひもといたり、未来を描くようなワークショップを開催したりすることもお勧めします。

 また最近はリモートでのオンライン会議が増えましたが、参加者の「小さな声」や「感情」をファシリテーターが敏感にシグナルとして感じ取って場に出す支援をすることも有効です。例えば「〇〇さん、今、何か言おうとされたように見えましたけど何かありますか?」といった具合です。

 リアルの場では表情や身振り、声のトーンといった非言語的要素で互いの真意を汲み取ることもできましたが、オンラインでは小さな画面からこれらを読み取ることは困難です。発言内容だけに意識が行き、議論が収束しても「理屈は分かるけど、気持ちがついていかない」といったことがよくあります。オンラインの時代だからこそ、ファシリテーターは、議論の内容に合理的に焦点を当てるだけではなく、話している生身の人間の情理にも注目して参加者の「気持ちが乗る」場づくりをすることが必要なのです。

広江 朋紀(ひろえ とものり)
(株)リンクイベントプロデュース ファシリテーター
産業能率大学大学院卒(組織行動論専攻/MBA)。出版社勤務を経て、2002年にリンクアンドモチベーションに入社。HR領域における豊富な経験を基に組織開発ファシリテーター・研修講師として活動中。著書に『なぜ、あのリーダーはチームを本気にさせるのか?』(同文館出版)、共著に『ワークショップのアイデア帳30』(翔泳社)などがある。

事前準備と安心・安全の場づくりが成功のカギ

 事前に入念な準備を整えることも大切です。会議の目的、参加者の役割や期待、当日までの流れなどを全員で共有し、参加者が期待感を持って臨める状態をつくらなければなりません。

 当日を迎えたら、本題に入る前に改めて目的や流れ(時間)に触れるとともに、グランドルールとして意見が否定されたり、判断されたりするような場ではないことを伝えます。さらに、互いに今の気持ちを伝えあう場であることに合意して、リラックスして臨める安心・安全な場をセットアップしましょう。